「感情的」は悪いことではない

2018年12月27日 17:35

 他人から「感情的だ」と言われると、それはあまり良い意味ではないことがほとんどでしょう。
 特に仕事の場面での「感情的」というのは、論理的、冷静、落ち着きの正反対の意味で使われ、感情を抑えて振る舞うのが良いこと、当然のこととされます。何があっても「感情的」にならないように心掛けている人が多いでしょうし、私もその意識は同じです。

 ただ、仕事の中から感情をすべて排除することはできません。あからさまな態度で周りを不快な気持ちにさせるような感情はよくありませんが、人間は感情の動物ですから、嫌なものは嫌ですし、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いです。
 表には出さなくても、自分の身の回りで起こったことや人間関係について、必ず何かしらの感情を持っています。その感情とは、「快」か「不快」かを直感的に判断しているといわれ、もっともらしい理由をつけても、結局は後付けの理屈ということは多々あります。

 組織でのマネジメントをしたり、チームでリーダーシップが必要だったりする場面で、この感情に配慮することは、実際には必須の要件となります。相手の感情を無視して、理屈や理性だけで判断していても、効果的な組織運営はできません。

 例えば、何かミスやトラブルが起こったとき、誰か一人だけの責任ということばかりではありません。それがみんなのミスや見落としがちょっとずつ重なって起こったものだったとき、自分の責任を全否定するまでではなくても、心のどこかに他の誰かを責めたくなる感情があるはずです。多くの人は、その感情を隠して「自分にも責任がある」「ミスはお互い様」などと言い聞かせて、論理的、理性的に振る舞おうとします。
 もしもそこで、感情をあらわにして一方的に他人を責める人がいたとしたら、同じく感情的に許せないと反応してしまうのではないででしょうか。

 しかし、このお互いの感情を事前に確認しあっていたとしたらどうでしょうか。不満な気持ち、申し訳ない気持ち、逃げたい気持ち、強がりたい気持ちなど、感情にはいろいろありますが、それを理性で抑えずに、あえてぶつけあって確認し合うと、その後の納得性は増します。相手の本音を知ったと思えるからです。

 理屈っぽいきれいごとだけでなく、様々な負の感情も含めてコントロールしなければ、良い組織運営はできません。
 優秀な組織には、メンバーのモチベーションを高めていく「モチベーター」が必要だと言われます。モチベーションの中には多くの感情に関わる要素が含まれ、この感情面からチームを盛り上げるリーダーがいますが、これは「感情的」になることを悪いものとして排除していては成り立たないことです。

 「感情的」なのは悪いことばかりではなく、誰でも良くない感情は持つものであり、それを示して認識し合うことや、その気持ちに配慮することが必要です。
 人は誰でも論理、筋道、正論だけでは納得できないことがたくさんあります。

 もしもすべての問題が論理的、理性的に処理され、感情が見えない職場があったとしたら、そちらの方がよほど問題です。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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