AIの活用で宅配便の不在配送を9割削減 東大などの研究チーム
2018年12月25日 07:07
東京大学大学院情報学環の越塚登教授らでつくる産学共同の研究チーム「不在配送ゼロ化AIプロジェクト」は24日、各戸に設置されたスマートメーターのデータを使い、AI(人工知能)が宅配便の不在配送ができるだけ出ないように配送ルートを設定するシステムを開発したと発表した。大学構内で行った試験では、配送の成功率が98%に達したといい、研究チームでは今後、自治体での実証実験を行い、2022年の実用化を目指している。
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同プロジェクトには、越塚研究室のほか、東京大学工学系研究科の田中謙司研究室、東大発のAIベンチャー企業「日本データサイエンス研究所」(東京都文京区)などが参加。同社の大杉慎平共同創業者が代表を務めている。
開発されたシステムは、各戸に設置されたスマートメーターからAIが電力データを取得。そのデータをAIが学習し、配送時間帯に各戸に住人が在宅しているかどうかを予測する。さらに、その予想に基づき、在宅している住戸から優先的に配送できるよう配送ルートを自動作成し、不在配送の軽減を図る。
研究チームは、2018年9月6日から10月27日までの約2カ月間、東大構内でシステムを使った配送試験を実施。この結果、配送成功率は98%にのぼり、人の判断で配送した結果と比較すると、現在、発生している不在配送の9割以上が削減されることが実証された。また、移動距離も5%短縮されたという。
個人向け配送は、ネット通販の売り上げ拡大とともに取扱量が増加しているが、受取人が不在のための再配達によるドライバーの負担増が問題となっている。国土交通省の試算によると、不在配送件数は全宅配件数の約2割を占め、数千億円のコストがかかっているという。研究チームは、AIの活用によって、こうした課題を解決しようとシステムの開発を始めた。今後、自治体の協力を得て実証実験を行い、2022年の実用化に向けて、プロジェクトに賛同する物流企業と連携していく。
今回の試験結果について、越塚教授は「不在配送は、現在の日本の個配物流における最重要課題の一つ。AIなどの技術を使って、これを効果的に解決できると分かったことは大きな一歩だ。また、各住戸が不在かどうかの判断はAIが行い、人が関わらないのでプライバシーの保護にもつながる」としている。