いすゞ新型「エルフ」、商用車でも求められる全と環境性能を実現

2018年12月23日 15:44

 いすゞ自動車の小型トラック「エルフ」が先進技術を搭載した新型車に生まれ変わっている。注目すべきは、ADAS(先進運転支援システム)だ。事故や荷物破損などのミスが許されない現場で、先進安全技術がリスクマネジメントに寄与する。

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 新型エルフには、プリクラッシュブレーキをはじめとした先進安全装置を標準装備した。同社は、小型トラックの事故分析結果に基づき、車両のみならず歩行者や自転車の検知に優れるステレオカメラを、小型トラックとしては初めて採用した。これにより、昼夜を問わず車両・歩行者・自転車といった障害物を立体的に検知し、万が一衝突の恐れがあると判断した場合には警報および制動装置を作動させ、衝突被害を軽減あるいは衝突回避を支援する。

 搭載したシステムは、カメラで車両前方の危険を検知、衝突の恐れがあると判断すると、車間距離警報を作動させ、まずはドライバー自身によるフットブレーキ操作を促す。その後、ドライバーがブレーキ操作をしないなど、さらに危険な状況に進行した場合にはプリクラッシュブレーキを作動させ、衝突被害の軽減または衝突回避を支援する。この「予防安全」が早めの危険回避をサポートし、人はもちろん、物流を担うトラックにとって大切な積荷の品質管理にも配慮している。

 標準搭載した安全運行支援システムには、プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減/衝突回避支援)、車間距離警報、車線逸脱警報(LDWS)、電子式車両姿勢制御システム「IESC」、先行車発進お知らせ機能、誤発進抑制機能(スム―サーEx車)が含まれる。

 また、小型商用車としては初採用となる燃料噴射量フィードバック制御、排気位相可変バルブ、モデルベース EGR制御等の最新技術の採用など、主要コンポーネントを一新した4JZ1型3リッター・ターボディーゼルを搭載。後処理装置にDPD+尿素SCRを新たに採用し、平成28年排出ガス規制に適合しながらクラストップの燃費性能を得ている。

 平成28年排出ガス規制は、ディーゼルトラックなどに対する排出ガス規制で、従来の規制よりもNOx(窒素酸化物)で約4割減を目標としており、この目標を達成できない新型車は、いずれ生産・販売ができなくなる。新型エルフは、この規制にいち早く適応した新型車である。

 厳しい規制をクリアするために採用した排出ガス浄化技術が“尿素SCR”だ。NOxをアンモニアと反応させることで水と窒素に分解して無害化。高いNOx浄化率を実現する技術である。が、これまで尿素SCRが普及しなかった理由のひとつが、定期的に必要となる尿素水の補充だったが、最近では多くのスタンドで取り扱っており、問題はクリアされた。もうひとつの理由が、尿素水を入れるタンクを含めたユニットの大きさだ。これがトラックの荷台部分と干渉してしまうのだ。新型エルフでは、ユニットを小型化し導入できた。

 また、通信端末を標準搭載することによりコネクテッド化し、2015年より大型トラック「ギガ」で展開を始めた、トラックの「IoT」ともいえる車両コンディションの遠隔把握及び本データを活用した高度純正整備「PREISM(プレイズム)」の実施が可能となる。「PREISM」は、車両コンディションデータの活用により「未然に防ぐ・すぐ直す」をコンセプトとした高度純正整備で、休車時間の短縮に貢献するサービスだ。

 いすゞの企業理念「運ぶを支える」を具現化する小型トラック新型エルフ、最新の安全運転支援システム、環境性能、そして通信機能を備えた次世代の商用車だ。(編集担当:吉田恒)

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