「しきさい」、観測データの提供開始 JAXAが説明会開催(1/2)

2018年12月23日 07:03

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し2017年12月に打ち上げた、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)は、約1年間かけて初期校正検証を行ってきた。その結果「しきさい」の陸域、大気、海洋、雪氷に関わる29種類の観測データ全てが、提供可能な精度に達成していることを確認した。これによりJAXAの地球観測衛星データ提供システム(G-portal)を通じて、20日から「しきさい」観測データを一般にも無償提供が開始された。

【こちらも】観測衛星「しきさい」から見た、猛暑の日本列島と海水温の上昇

 「しきさい」の観測データの提供開始に関する記者説明会では、JAXAの第一宇宙技術部門GCOMプロジェクトチーム、杢野正明(もくの まさあき)プロジェクトマネージャと、同部門地球観測研究センター、村上浩(むらかみ ひろし)研究領域主幹が、「しきさい」について等の説明を行った。

 杢野プロジェクトマネージャは、公開された「しきさい」が捉えた初冬の様子の画像について説明。19日に撮影された日本列島の画像には、天気の良かった関東がはっきりと地表が写っている。RGB合成画像で色が付けられており、氷雲・積雪である水色の部分は、北陸地方を中心に観測されているのがわかる。また、9月19日から12月19日に捉えた本州中部の様子では、9月の写真では緑で覆われ植生を表していたが、11月中旬から茶色に変化していて紅葉や落葉の様子が分かった。

 「しきさい」は衛星システム及び地上システム共に正常に運用を継続しており、観測データ提供準備も整った。今後は、G-portalを通じて「しきさい」観測データの提供を開始していく。

 提供出来る観測データの情報については、村上研究領域主幹が詳しく説明した。

 1年間の初期校正検証活動(29種類の観測データ検証)の結果、次の観測が可能になった。放射収支(雲・エアロゾル、雪氷)では、太陽からのエネルギーがどうやって地球に再分配されるかが分かる。また炭素循環では、大気中のCO2にも関わる全球通信システム(GTS)で配信されるブイや船舶観測による海面水温観測値をNOAAが編集したデータセット(iQuam)と、「しきさい」から推定した海面水温値を比較し、目標ととする精度を十分満たすことを確認したと説明した。

 陸の温度は昼と夜1回づつ測定する、海洋測定では、海面水温とクロロフィルという植物プランクトン光合成色素(クロロフィルa)濃度を推定、大気測定では火災などによる全球または領域のエアロゾルの観測、近紫外(380nm)を用いることで、森林火災のエアロゾルと雲を明確に識別できる。近紫外から熱赤外までの19の観測波長帯(色)を持ち、偏光・多方向、近紫外波長、250mの空間分解能、かつ1000㎞以上の観測幅(全球を約2日間で観測)が特徴だ。

 「しきさい」の多彩な機能を用いて作成される雲・エアロゾル・植生等のデータプロダクトは、温暖化予測精度の向上に向けた研究に加え、漁場予測・赤潮の把握・交差の飛来など、私たちの生活にも役立つ情報として利用される。(続く)

関連記事

最新記事