インテグリカルチャーと東京女子医大、細胞培養技術で宇宙開発の食料問題解決を目指す

2018年12月21日 11:24

 細胞農業の普及を目指すインテグリカルチャーと東京女子医科大学は20日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査イノベーションハブが実施する研究提案プログラムに、両者の研究が採択されたことを発表した。採択されたのは、地上探査と地上の新しい産業につながる「今までにない斬新でチャレンジングな研究」として募集したもので、「TansaXチャレンジ研究」として選ばれた。

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 この研究は、光エネルギーと「藻類・動物細胞共培養リサイクルシステム」により、月や火星など宇宙の閉鎖系空間で食肉の生産を実現する細胞農業技術の共同研究であり、夢の月面基地構想や火星移住などを叶える礎ともなる。

 現在、月や火星で人間が生活をする研究が各国で進められ、長期の有人宇宙活動の必要性が高まっている。それを可能にするのが現地での食料確保であり、少ないリソースで効率的に食料を生産する技術が求められている。食料供給をサスティナブルに行うために、植物工場や藻類培養の検討が進められているものの、現状ではタンパク源の確保や食の満足度が課題となっている。

 こうした状況の中で今回の研究は、無重力・低重力の宇宙空間下で、藻類と動物細胞の共培養による細胞培養効率の大幅な向上と培養系の確立を目指し、これらの課題を解決することを目的とする。

 そもそも細胞農業とは、特定の細胞を培養することにより、本来は動物から採れる食肉や植物の収穫物などを生産する方法のひとつ。細胞培養技術を駆使して食肉を生産することにより、環境負荷や公衆衛生上のリスクを軽減し、永続的な供給手段を確保する畜産技術である。

 この細胞農業技術を活かした研究により、少ないリソースで効率良くタンパク源や各種栄養素をつくり、共培養を用いた食肉生産が可能になれば、宇宙での定住を可能にするだけではなく、世界的な人口増に伴う食糧不足・タンパク質不足にも対処できることになる。

 また、近い将来に200兆円を超えるとされる世界の水産・畜産需要を取り込む技術的な足掛かりにもなることから、日本の食糧安全保障環境の改善につながることも期待されているという。

 研究は、東京女子医大先端生命科学研究所所長の清水達也教授をリーダーに進められるが、宇宙開発だけではなく、食の未来にも変革をもたらす取組となりそうだ。

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