介護・看護の質向上へ 「抱えない介護」広がる
2018年12月17日 09:22
高齢化社会が進むにつれて、介護・看護の現場では労働者の健康を守ることに注意が向けられつつある。特に深刻になっているのが、介護者を悩ませる腰痛だ。これまでも様々な対策が講じられてきたが、介護や介護に伴う腰痛を理由とした介護離職者は毎年10万人前後に上る。そんな中、注目を集めるのが要介護者を抱え上げない介護、「ノーリフトケア」だ。
ノーリフトケアはヨーロッパで最初に導入されたもので、介護機器などの使用によって介護者の身体的負担を軽減する介護方法だ。介護の現場では要介護者を抱き上げたり支えたりする動作は頻繁に行われている。特にベッドから車いすに移動させる、車に乗せるなど毎日行われる動作において介護者が要介護者を抱き上げる必要があるため、介護者の身体的負担は大きい。実際厚生労働省が行った「2014年度介護労働実態調査」によれば、介護職に就いている人の約3割が腰痛などの身体的負担に悩まされていると回答した。
一方でノーリフトケアを実践すれば、介護者の腰痛のリスクを最小限に抑えられる。もちろん最新の介護機器を使うこともあるが、基本的な考え方は介護者がしっかりと全身の力を上手に使うことで腰痛を防ぐことにある。そのうえでスライディングシートやリフトを利用した移乗を行うようにする。日本では介護業界に最新のロボット技術を導入すべきとの声もあるが、ノーリフトケアによって労働者の負担はかなり軽減されるだろう。日本では2009年から日本ノーリフト協会が発足し、ノーリフトケアの普及に努めている。
もしノーリフトケアがより浸透していけば、これまで若者だけが行えるものとされてきた介護業界で中年層、高年層が働くことも可能になる。人材不足を改善していく一助ともなるだろう。今後は介護事業者へのリフト導入の支援を手厚くする、国・地方自治体が積極的にノーリフトケアを推進するなどして、認知度を高めていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)