キヤノン、FOWLP向けステッパー販売 パッケージの薄型・軽量化が進む
2018年12月11日 18:47
キヤノンは10日、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)後工程向けステッパー「FPA-5520iV」の高解像度オプションを12月下旬より発売すると発表した。
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30年前、半導体の微細化は0.8マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)の時代に突入。それを支えたのが半導体の前工程向けの露光装置、i線ステッパーだ。i線とは、波長365ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の光源であり、水銀ランプを使用。800ナノメートル寸法のトランジスタを加工する。この露光装置の研究開発は、ニコン、キヤノン、日立といった日本メーカーが主導した。
最先端半導体の微細化は、7ナノメートル世代に突入。波長13.5nmの極端紫外線(EUV)を使用するが、露光装置で先行するのは蘭ASML。そのシェアは90%強とも言われる。
今回の発表は、このi線を用いた露光精度をパッケージ技術に適用するという内容だ。半導体の微細化の進展による高集積化が停滞しつつあるなかでも、製品の小型・薄型化要求は留まる所を知らない。そこで、期待されるのはパッケージの微細化だ。特に、FOWLPは最有力技術だ。
●FOWLPとは
半導体チップを表面実装する方式。複数の半導体チップをパッケージングして、チップ間を接続するのに必要な配線を半導体工程で作成。具体的には、半導体チップの端子から配線を引き出す再配線層(Redistribution Layer)にi線の露光装置で形成する。パッケージ基盤がないため薄く、かつ、高密度実装が可能だ。この高密度実装は、チップ間の配線長が短くなることから信号の伝送速度の高速化に繋がる。
パッケージ基盤が不要になることから、半導体の前工程で使用するような露光装置を使用しても、製造費用の低減が見込める。
アップルは2016年、台TSMCの独自FOWLPを用いてiPhone 7を製造。スマホの薄型・軽量化を実現した。他方、TSMCはこの独自技術で、サムスンを尻目に、iPhone 7の全量受注を勝ち取ったとも噂された。
●FPA-5520iV HRオプションの特長
FOWLP技術での量産課題(反りとばらつき)を解決するオプションだ。複数の半導体チップを配列し、樹脂でウエハー形状に固めた再構成基板に発生する反りに対応。加えて、チップ配列のばらつきが大きい再構成基板でも、位置合わせマーク(アライメントマーク)を検出可能という。
●FOWLP(キヤノン、FPA-5520iV HRオプション)のテクノロジー
枯れた半導体前工程の露光技術を、FOWLPという新技術の後工程に活用。技術の横展開は日本のお家芸だ。
半導体露光装置の応用ソリューションをアップグレードオプションとして提供することで、露光装置のメンテナンスに加えて、新たな付加価値を提供する考えだ。(記事:小池豊・記事一覧を見る)