飲食やサービス業、仕入れ価格上昇も価格転嫁は困難 日本公庫調査

2018年12月9日 17:03

 日本政策金融公庫の調査によると、飲食業や宿泊業などで仕入れ価格が上昇していると答えた企業が増えているものの、価格に転嫁できている企業は低い割合で留まっていることが分かった。

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■仕入れ価格「上昇」は56.2%

 7日、日本政策金融公庫が2018年7~9月期における「生活衛生関係営業の景気動向等調査」の特別調査結果を発表した。調査対象となった企業は、飲食業や理容業、宿泊業など3,290社で、郵送による調査を行い回答のあった3,092社分を集計している。

 仕入れ価格について「上昇した」と答えた企業の割合は56.2%で、前年調査の49.7%から6.5ポイント増加。「変わらない」は39.1%(前年:46.5%)、「低下した」は4.7%(同3.8%)だった。業種別で「上昇した」と答えた企業の割合が高かったのは、飲食業(75.2%)、ホテル・旅館業(72.4%)、クリーニング業(72.3%)、食肉・食鶏肉販売業(62.4%)、公衆浴場業(51.4%)。反対に低かったのは、美容業(19.0%)、理容業(22.1%)、氷雪販売業(23.1%)、映画館(34.8%)。

■公衆浴場やホテル・旅館業で影響大

 仕入れ価格が上昇したと答えた企業に対して、経営悪化への影響について尋ねたところ、「かなり影響がある」は22.2%(前回:19.5%)、「ある程度影響がある」は61.3%(同61.3%)、「どちらともいえない」は11.8%(同12.6%)、「影響はない」は2.9%(同4.9%)、「わからない」は1.4%(同1.6%)だった。

 業種別で影響があると答えた割合が多い業種は、公衆浴場業(かなり影響がある:41.1%、ある程度影響がある:51.8%)、ホテル・旅館業(同21.4%、67.5%)、食肉・食鶏肉販売業(同28.6%、58.2%)、飲食業(同23.9%、62.0%)、クリーニング業(同21.8%、63.8%)。割合が低めだった映画館(同4.3%、73.9%)、氷雪販売業(同16.7%、50.0%)、理容業(同5.6%、59.6%)、美容業(同6.9%、56.3%)と、いずれの業種でも50%を超えている。

■価格に転嫁できている企業は10%未満

 仕入れ価格が上昇したと答えた企業に対して、価格転嫁について尋ねたところ、「全て転嫁できている」は2.3%(前回:1.2%)、「概ね転嫁できている」は6.9%(同6.6%)、「一部転嫁できている」は30.6%(同32.5%)、「全く転嫁できていない」は57.2%(同56.9%)、「わからない」は3.0%(同2.8%)だった。

 業種別で「全く転嫁できていない」が多いのは公衆浴場業(78.6%)、クリーニング業(69.1%)、ホテル・旅館業(62.7%)。反対に「全て転嫁できている」「概ね転嫁できている」が多めの業種は、氷雪販売業(全て転嫁できている:16.7%、概ね転嫁できている:25.0%)、美容業(同5.7%、12.6%)、映画館(同0%、13.0%)、理容業(同4.5%、7.9%)、食肉・食鶏肉販売業(同1.0%、11.2%)。

■仕入れ価格見通し「上昇する」は5割超も「値上げする」は2割程度

 販売価格の動向について尋ねたところ、「引き上げた」は17.3%で、前年の16.3%から1.0ポイント増加。また、「据え置いた」は81.3%(前年:81.7%)、「引き下げた」は1.4%(同2.0%)となっている。

 今後1年間の仕入れ価格の見通しについては、「上昇する」は53.9%、「変わらない」は42.9%、「低下する」は3.3%。今後1年間の販売価格の見通しについては、「引き上げる」は20.2%、「据え置く」は78.8%、「引き下げる」は1.0%となっている。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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