AIで仏像の表情を分析、感情や年齢を推定 奈良大の研究

2018年12月6日 17:04

 日本マイクロソフトは5日、同社のAIであるCognitive Servicesを用いて奈良大学がおこなった、仏像の表情からその感情や年齢を推定する調査の結果について発表した。如来や菩薩、天部など仏像の種類によって表情に示される感情は異なり、またより人間に近い僧形像ではモデルとなった人物の年齢に近い数値が測定できたという。

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 まず感情は、仏像の表情から読み取れた怒り、軽蔑、嫌悪感、恐怖、喜び、中立、悲しみ、驚きの8つの数値データを分析することで測定された。対象となった約210体の仏像は、如来、菩薩、天部、僧形などその種類によって示す感情の傾向が異なっていた。

 例えば悟りを開いたものである如来は中立、人でいう無表情の数値が高い傾向にあり、これは人の表情を超えた顔貌を表現しようとしたためだと考えられる。悟りを求めて修行する菩薩もまた、如来同様中立の数値が高い。

 仏教の守護者たる天部は怒りの数値が高めで、またときにはその怒りの表情が人の表情を超えているためか測定不能となる場合が多い。なお煩悩にとらわれている人々を力づくで正す明王はほとんどの場合怒りの表情が強く出ており、分析対象からは除かれている。

 他方、時代別にみると、飛鳥時代の仏像は喜びの数値が、奈良及び鎌倉時代の仏像は怒りの数値が高い傾向が窺えた。

 そして年齢においては、最年少が正法寺の釈迦如来坐像で2.9歳、最年長が西大寺の叡尊坐像で83.5歳、全仏像の平均年齢は38歳との推定結果が得られた。さらに実在した僧をモデルにつくられた像では、その本人に近い数値が出ることも確認された。

 叡尊上人の肖像である叡尊坐像は、上人が90歳で亡くなる前の姿だといわれている。その点を鑑みれば、推定された83.5歳という年齢は史実にかなり近い数値となった。

 ただ、表情から測られたこれらの数値は状況によって変動する。あくまで傾向を知る際の参考値であることには注意が必要だ。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る

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