世界標準との比較で良いのか? 役員報酬 カルロス・ゴーンと豊田章男氏との比較(下)
2018年12月6日 11:46
■(2)投資家の立場からの役員報酬額
アメリカの資本主義経済では、企業は投資家のものであり、社員は「働く道具」との認識に近いのが現実だ。そのため、会社は株主のもので、組合の権利などはほとんど無視されてきている。現在ファンドマネーがあふれているように、投資による配当、金利などを貰うことに躊躇はない。
【前回は】世界標準との比較で良いのか?役員報酬 カルロス・ゴーンと豊田章男氏との比較(上)
企業は多くの働き手で成り立っているのだが、まるで奴隷のように企業に従属するものとの割り切りが強い。すると投資家は、企業に投資するとき、経営者に自分の資金を預ける意識が強く、公の資金とは感じていない。社員も、働く以上それに見合った報酬を受け取る権利が明確にあるのだが、投資家には経営者しか見えていない。企業の「社会的責任論」などは、現在のアメリカ企業には「みじんも感じない」と言ったら、言いすぎであろうか。少なくともリーマン、テスラなどを見る限り、どこにも見出すことはできない。配当金は労働生産の「ピンハネ」にも近い性質のものだが、こうして決められる役員報酬には、社員に対する人間性の配慮は見いだせない。日本社会の常識のほうが、はるかに人間性を感じる。
■トヨタ豊田章男社長の役員報酬
トヨタ豊田章男社長の2017年度報酬は、基本報酬9900万円+賞与2億8000万円=総額3.8億と公表されている。しかし、これに豊田章男氏が保有するトヨタ株式457万4000株の配当金を加算せねばならない。2017年度配当1株につき220円で、約10憶円の配当金であると思われる。つまり、役員報酬3.8+株配当金10億円=総額約14憶円と見られる。
株の配当金は役員報酬とは別途と考えるべきとの意見もあるが、創業家の姿勢としては、「役員報酬とは、使用人として働いた分の報酬」の意味であり、雇われ社長と意味が違ってくる。やはりカルロス・ゴーンとの比較ならば、3.8憶円と比較するべきであろう。その他の、ゴーン氏と同じような公私混同ともとれる法人からの利益供与は分からないが、それにしても、配当金を含めてもカルロス・ゴーンの約半額である。
皆さんは、「創業家社長」と「雇われ社長」の違いをどのようにみているのだろうか?どちらが良いと一概に結論できないが、少なくとも創業家は長期的視野があり、現代では家族とは言わないが、「働いてくれる人」と人間性を認めるところが感じられる。創業家ならではの「自己中」が過ぎることもある世の中だが、皆さんはどう感じているのだろうか。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)