ゲノム解析が明らかにしたメダカの日本列島縦断 岡山大学などの研究
2018年12月4日 16:13
観賞魚として親しまれ、また絶滅危惧種としても知られるメダカ。沖縄・九州・四国から本州の北部まで広範な範囲に生息し、大きく太平洋側の南日本グループと日本海側の北日本グループに分けられる事が知られているのだが、彼らの祖先がどのような経路を辿って日本列島を縦断したか、それに迫る研究が岡山大学大学院自然科学研究科の勝村啓史研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科の三谷啓志教授ら、北里大学医学部の共同研究グループによって行われた。
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メダカの絶滅危惧と種内多様性については重大な問題が一つある。もともと日本のメダカは前述のように「メダカ北日本集団(Oryzias sakaizumii )」と「メダカ南日本集団(Oryzias latipes)」に学術的には分類されるのだが、さらに細かく遺伝的な違いを求めていくと、生息水域ごとに「東日本型」、「東瀬戸内型」、「西瀬戸内型」、「山陰型」、「北部九州型」、「大隅型」、「有明型」、「薩摩型」、「琉球型」という9つの地域型が存在していたのである。
しかし、メダカが絶滅危惧種に指定された後で起こったメダカ保護ブームによって、他の地域産である別種のメダカや、飼育品種のヒメダカなどを自然水系に放流してしまった例が多々あり、これによる地域個体群の絶滅が危惧されているのである。
さて、今回の研究そのものは、東京大学が30年以上前に収集した系統維持群が利用された。ヒトゲノムの解析法をメダカに応用してメダカの集団構造を推計した結果、実際には日本のメダカは7つの遺伝的グループに分かれ、そのうち5つまでが南日本グループに属することが分かった。また、南日本グループの発生は北部九州、北日本グループの発生は但馬・丹後地方(現在の京都と兵庫の北部)と見られるという。
なお、研究の詳細は、G3: Genes, Genomes, Geneticsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)