低タンパク質・高炭水化物の食事で脳の老化が予防できる可能性 シドニー大の研究
2018年12月4日 11:16
●カロリーを制限した食事療法と同等の効果が
シドニー大学が科学雑誌『セル・リポーツ』に、新たな研究結果を発表した。それによると、低タンパク質・高炭水化物の食事療法は、カロリーを制限した食事療法と同様の効能を脳にもたらす、としている。現在、認知症に効果的な治療法は開発されていないため、脳の老化を予防する食事療法が注目を浴びている。
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●日本の沖縄も「低タンパク質」の地域として
過去の研究では、低タンパク質・高炭水化物の食事療法は、長寿の条件のひとつとされることが多かった。その好例として、研究チームの1人は沖縄の食生活を上げている。沖縄の食生活に占めるタンパク質の割合は9%。魚介類、大豆、野菜、わずかな量の肉が、それに相当する。そして、沖縄の「炭水化物」に占めるサツマイモの割合の高さが非常に特徴的だという。
●マウスでの実験ではタンパク質の割合が5~10%に
沖縄だけではなく、地中海諸国の長寿を誇る地域の食生活を参考に、シドニー大学の研究チームは実験を行った。実験での食事では、タンパク質の割合は5~10%に制限された。また、マウスに与えるタンパク質と炭水化物は、デンプンとカゼインに由来するものに限定されている。
研究チームは、とくに脳内において学習と記憶をつかさどる部位「海馬」に注目した。「海馬」の萎縮が、アルツハイマー型認知症の発症に影響を与えるといわれているためである。
食事療法実施後のマウスを観察した結果、あらゆる年齢のマウスの脳に、低タンパク質・高炭水化物の食事療法は効果があることが判明した。とくに、雌の脳に対して老化を防ぐ効果が高かったという。
●飽食の時代には困難なカロリー制限
食不足が国際的な問題になる一方で、西洋社会では肥満が大きな課題となっている。周囲にあらゆる食があふれている地域では、カロリー制限によるダイエットは非常に困難である。
シドニー大学の今回の研究は、タンパク質の割合を5~10%に抑えた食事療法により、肥満や糖尿病などに関する代謝が改善されるにとどまらず、心臓病のリスクの低下の可能性があることも示唆している。
アルツハイマー協会会長のジェームス・ピケット博士は、今回の研究がまだマウスの実験にとどまっていることをあげ、人間の脳に対しどのような影響を及ぼすかはまだ不明とコメントしている。