銀河の中心「超巨大ブラックホール」ドーナツ構造の正体を解明 国立天文台など
2018年12月3日 08:52
アルマ望遠鏡を使って、コンパス座銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールを観測し、その周囲のガスの分布と動きをこれまでになくに明らかにすることに成功した。今回の研究は、国立天文台の泉拓磨特任助教、鹿児島大学宇宙物理学専門の和田桂一教授を中心とした研究チームで行われ、ミリ波サブミリ波を用いた活動的な銀河の観測的研究をしている、東京大学天文学敎育研究センターの河野孝太郎教授も参加している。
あらゆる天体の中で、もっとも大きくて重いのが超巨大ブラックホールであり、多くの銀河の中心にその暗黒の天体がある。その中心のブラックホールに、ガスなどが大量に落ち込むことで、宇宙でひときわ明るい天体として輝くことがある。これまでの観測から、そのような活動銀河核の周りのガスはドーナツ形をしていると考えられていたが、なぜそのような形になるかは長年の謎であった。
和田教授らは、岩手県奥州市にある、国立天文台の世界最速の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」を駆使したシミュレーションから、ブラックホール周囲のガスの動きによってドーナツ形が形成されたと考えた。
東京大学のイメージ図によると、超巨大ブラックホールを取り巻く円盤のガスなどは、回転しながらブラックホールに落下していく。取り込まれたガスはブラックホール周辺から広い範囲に噴き上げられ、その噴き上げられたガスの一部は、重力によって再び円盤に落下してくる。この3つの事象が合わさることでドーナツ構造ができていると説明している。
この予測を更に確かめるために、泉特任助教らは、活動銀河核を持つコンパス座銀河をチリにあるアルマ望遠鏡で観測した。コンパス座銀河までの距離はおよそ1400万光年と地球に比較的近く、ガスの運動や細かい構造の観測が可能だった。観測された特徴は、いずれもスーパーコンピュータによりシミュレーションされた予測通りで、ブラックホール周囲のガスが放つ光の圧力で噴き上げられたガスが、重力に引かれて再び戻ってくるという一連の流れが、自然にドーナツ形を作り出しているというものだった。
本研究成果は10月30日発行の米国天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。