基礎生物学研究所、食塩の過剰摂取が高血圧を招く脳の機序を解明
2018年12月3日 08:25
塩分を取りすぎると高血圧になるという事実はよく知られている。しかし経験的には古くからよく知られているこの性質が、どのような生理的機序に基づいて生じているかについては実は謎が多い。今回、基礎生物学研究所は、脳にあるその仕組みを明らかにしたと発表した。
【こちらも】東北大や東ガスら、全身持久力が高血圧発症リスクを低下させることを発見
高血圧は現在、日本で成人だけで4,300万人が罹患していると言われる深刻な国民病である。食塩の摂り過ぎが原因となることはよく知られており、現在の通説としては、体液中のNa+濃度が上昇することで交感神経系を活性化し、その結果として血圧が上がるという説が有力である。しかし、脳がどのようにNa+濃度を感知して、どのように交感神経に伝えているのかは謎であった。
今回の研究に携わったのは、基礎生物学研究所の野村憲吾研究員、野田昌晴教授(総合研究大学院大学教授、東京工業大学教授(併任))である。研究グループは、塩化ナトリウムを過剰摂取して体内のナトリウム濃度が上昇すると、体内のナトリウム濃度センサーであるNax(ナトリウムイオンチャンネルの一つ)がこれを感知して活性化し、交感神経を活性化して血圧上昇が起こることを解明した。
Naxの遺伝子を欠損したマウスは、通常のマウスと異なり体液のナトリウム濃度が上昇しても、交感神経の活性化による血圧の上昇を起こさないということも確認された。さらには、神経活動の活性化や抑制を光でコントロールする技術を応用し、この仕組みを分子及び神経回路ネットワークのレベルで解明することにも成功した。
この研究がナトリウム濃度と血圧上昇を繋ぐ脳内機構を明らかにしたことで、高血圧に対する新たな治療戦略や、創薬などに繋がることが期待される。
なお、研究の詳細は、アメリカの科学雑誌「Neuron」オンライン版で公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)