五輪や観光客増加受け好調 未上場建設企業の利益はリーマン時の約9倍に
2018年11月30日 16:56
東京商工リサーチは29日、全国の未上場建設企業の2017年度業績調査結果を発表した。東京オリンピック・パラリンピックのためのインフラ整備や観光客の増加によるホテル需要などの伸長を背景に、売上高合計および利益合計はともに過去10年間で最高となった。特に利益合計はリーマンショックがあった2008年度の約9倍にまで伸びている。
【前年度は】未上場建設業者の景況にカゲリ 2016年度の売上高は伸び鈍化
株式未上場の建設会社のうち、一定期間の業績比較が可能な13万8,645社が対象。2017年度における売上高合計は62兆5,909億円となり、61兆2,114億円だった2016年度より2.2%増加した。利益合計は前年の1兆7,374億円から12.7%増加の1兆9,588億円だった。
なお売上高がトップの企業は竹中工務店で1兆65億円と、唯一1兆円を超えている。売上高上位50社のうち70%にあたる35社が増収を果たしており、竹中工務店の次にはフジタの4,306億円、旭化成ホームズの4,067億円が続く。
地区別にみると売上高は北海道から九州までの9地区中東北を除く8地区で、利益は9地区全てで2016年度を上回った。売上高においては、北海道および熊本で起こった地震からの復興需要に加え、インバウンド効果によるホテルの建設、ビルやマンション、商業施設などの開発がその増加の理由と考えられている。
利益の増加については人件費ならびに資材にかかる費用の高騰を受け労務単価が引き上げられ、それらのコスト上昇を踏まえた発注が広がったこと、利益を出せるよう選別受注が強められたことの影響が窺える。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは4月の経済レポートにて、2018年から2019年にかけ東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設などの需要が本格化すると述べている。今回の調査の結果を考えればまだしばらくの間建設業界では好況が維持される可能性が高い。
しかし材料費の高騰や人手不足といった問題は顕著になっており、東京など都市部と他地域の格差拡大なども懸念される。こうした問題は好況が終わった後、例えば東日本大震災があった東北地区のように復興需要が落ち着いた後表に出てくる可能性があるため、注意が必要だ。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る)