小質量の銀河が合体し大質量楕円銀河へと成熟 すばる望遠鏡による発見

2018年11月29日 20:59

 国立天文台、東京大学、コペンハーゲン大学らが参加する研究グループは26日、すばる望遠鏡に搭載された近赤外線カメラ等を用いた撮像観測から、約120億年前となる大質量楕円銀河の祖先の形態を明らかにした。大質量楕円銀河の形成の謎を解き明かす鍵となる重要な成果だ。

【こちらも】すばる望遠鏡で、大質量楕円銀河の進化と形成を明らかに―小野寺仁人氏ら

 宇宙には渦巻銀河や楕円銀河など、さまざまな銀河が存在する。とりわけ大質量の楕円銀河は古い星で占められており、その大部分が昔の宇宙で生まれたと考えられている。そのため、大質量楕円銀河がいつ宇宙で発生し、大量の星が形成され、その形成を止めたかなどが盛んに研究されている。

 そのなかでも大質量楕円銀河のサイズ進化がとりわけ注目されている。米航空宇宙局(NASA)が運営するハッブル宇宙望遠鏡などの観測から、昔の宇宙ほど典型的な銀河の大きさが小さくなることが判明している。小質量の銀河が合体したのか、あるいは断熱膨張によりサイズが進化したのかなどいくつかの仮説の候補が挙げられているが、いまだ結論は得られていない。

 研究グループは、約120億年前の宇宙で、星形成をやめた大質量銀河の中から、太陽の1,000億個分の星の質量に相当する大質量楕円銀河を選定した。そのうえで、この銀河をすばる望遠鏡で観測、近赤外線カメラで撮影した結果、有効半径が1,600光年ほどであることが判明した。これは、同程度の質量をもつ大質量楕円銀河の大きさの約20分の1と極めて小さいという。

 研究グループは、大質量楕円銀河のサイズが進化するいくつかの仮説を比較した結果、小質量銀河が合体したというシナリオがもっとも合致すると結論づけた。

 遠方の銀河は非常に暗いため、高分解能の観測が行なえるハッブル宇宙望遠鏡が研究に活用される。ところが古い星が放つ可視光線を調べることも、銀河の形態を研究するうえでは重要であり、ハッブル宇宙望遠鏡では十分に観測できない。すばる望遠鏡に搭載された近赤外線分光撮像装置(IRCS)は、この難点を克服可能だ。

 研究の詳細は、米天文学誌Astrophysical Journalに20日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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