エリーパワー、不燃性電解液のリチウムイオン電池 超安全を柱に飛翔なるか
2018年11月27日 18:58
エリーパワーは26日、電解液に不燃性のイオン液体を用いたリチウムイオン電池の開発に成功したと発表した。
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リチウムイオン電池は、実用化されている二次電池の中で最も高いエネルギー密度を誇る。スマホ、パソコン、ドローン、電動自動車などモバイルバッテリーの二次電池の主流だ。課題は電解質が可燃性の電解液であることから、発熱や発火の危険を伴うことだ。
東京消防庁は2016年12月22日、「リチウムイオン電池からの火災にご注意を!」との注意喚起を発表。モバイルバッテリー、スマホ、電子たばこ、ノートパソコンなどで使用されているリチウムイオン電池の充電中または使用中に出火する火災が急増したためだ。2011年から2015年の5年間の火災が65件であるのに比べて、2016年は50件。リチウムイオン電池の急速な普及に連動する結果だ。加えて、50件の火災の内、33件は通常使用時での火災、誤使用での火災17件の倍の数値だ。
リチウムイオン電池は、正極・電解質・負極の構成をとり、リチウムイオンが正極と負極の間を行き来することで、充放電を可能にする二次電池だ。電解質に可燃性の電解液を用いるため、短絡・液漏れ・発熱といった状態が発火を誘発する。
そのため、リチウムイオン電池と同じ原理でありながら、可燃性の電解液を使用しない研究が盛んだ。一つは電解質を不燃性の固体に代える全固体電池であり、もう一つは可燃性の電解液を不燃性のものに代替するリチウムイオン電池だ。この新たなリチウムイオン電池の経済的メリットは、既存のリチウムイオン電池の生産設備や工程を引き継ぐことができることだ。
エリーパワーは1月20日、銃弾貫通でも燃えない大型リチウムイオン電池を量産すると発表。その技術は、安全性に優れたオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムを正極材に採用し、放熱性も高めるものであった。今回は、電解液に不燃性のイオン液体を用いることで、安全性をさらに高めた。
●電解液に不燃性のイオン液体を用いたリチウムイオン電池の特長
イオン液体は化学的に安定した不燃性であるが、粘度が高いためリチウムイオンの行き来(輸率)を上げることは困難とされてきた。これを新たな製法で解決。製法特許出願をするとともに、2020 年代前半の量産を目指す。
23度の環境下で実施したフル充放電を繰り返す寿命試験では、1,000 サイクル後に 90%以上の容量保持率を達成。これは、従来のリチウムイオン電池と同等の寿命だ。
●リチウムイオン電池(エリーパワー、不燃性電解液)のテクノロジー
これまでに、安全基準認証(TUV-S マーク)、安全規格UL1642準拠、消防庁の蓄電池設備型式認定18C703など、第三者による安全認証を獲得。技術開発の柱は安全だ。
今回の開発により、建物内への大規模蓄電池設備の設置が加速される。消防法では建物に設置される危険物と電解液の総量が200リッターを超えると規制対象となるが、それを回避することに成功。
全固体電池の開発にも意欲を見せるが、従来の有機電解液をイオン液体に置き換えることで、電池製造工場の設備投資の抑制にも繋がる。2006年創業の会社が躍進する経営手腕が、安心を柱とする技術革新を支える。(記事:小池豊・記事一覧を見る)