日本人は「スキル不足」 主要国で最下位 原因は教育と労務慣行
2018年11月27日 09:09
日本は現在、深刻な人手不足の状態にある。人手不足の背景としてはオリンピック関連や団塊の世代の労働市場からの退出など絶対数について議論されることが多い。しかし、日本の深刻な人手不足にはもうひとつミスマッチによる人手不足の問題があり、この方がより深刻であると言える。
ミスマッチで最も深刻なのはIT関連の人材だ。欧米ではITエンジニアはマネジメントクラスであると聞く。現代では経営戦略はIT戦略と直結するためITの専門知識を持った者がマネジメントクラスを担当する必要がある。日本ではこの手の人材が圧倒的に不足している。
ITに限らず世界の人事は個人の専門的キャリアを重視する。もはや世界には就社という概念はなく、自分の専門をキャリアアップしていくために企業の投資プロジェクトに参加するという考えが常識だ。日本の企業に就職した外国人が自分の専門分野を尊重してもらえなかったために帰国してしまうというケースも少なくない。
外資系人材紹介会社のヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンが世界33カ国のハイスキル労働市場おける人材の需給効率を評価・分析した調査研究「グローバル・スキル・インデックス」を実施し、6日その結果を公表した。
「人材ミスマッチ」の深刻さを示す指標で日本は10ポイント中10、世界33カ国中最も深刻という結果になり、昨年の9.98から深刻度を増している。専門性の高い業界の賃金上昇が他よりも遅い事を意味する指標では0.2という極めて低い水準だ。
日本では企業が求めているスキルと労働者が持っている専門スキルが大きくかい離している。特に専門的な人材の不足が深刻なIT業界や自動車ではAI技術者やデータサイエンティスト、IoT技術者などで企業が求めているレベルの専門スキルを有した人材が圧倒的に不足している状況が続いている。
この現況は急速な技術の進化に日本の人材が持つ専門スキルが追い付いていないことを意味し、レポートでは、その背景として日本の高等教育のあり方や終身雇用制度、人事評価制度などの労務管理上の慣行があると指摘、日本は現在、「世界一スキル不足の国」であると評価している。
政府はこうした現況を踏まえ高度外国人人材の永住権取得の規制を緩和した。しかし、日本の企業が労働者の専門性を尊重しない限り定着してもらえるかは疑問だ。企業側の意識改革が何よりも重要だ。(編集担当:久保田雄城)