アルプス電気、アルパインとの統合後の経営方針を発表

2018年11月27日 08:38

 アルプス電気【6770】は26日、取締役会を開催し、子会社であるアルパイン【6816】との統合後の経営方針について発表した。健全な財務基盤を確保したうえで、持続的な成長への投資が必要とし、また、資本効率を向上することで株主への還元を積極的に行うことを議決。この発表は来月5日に予定するアルパイン臨時株主総会での両社統合の決議に向けて、多くの株主の賛同を得るためのものと思われる。

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 アルプス電気は1948年創業の大手電子部品・音響機器のメーカーである。本社は東京都大田区にあり、上場子会社としてアルパインとアルプス物流【9055】がある。一方アルパインは同社のグループ子会社としてカーオーディオやカーナビなどを製造している。

 発表によると現在の市場革新が進む状況を第4次産業革命と位置付け、両社の統合によって売上高1兆円企業を目指すために3つの経営方針を提示した。

 1つめは「健全な財務基盤の確保」である。国内格付けA格を維持し、自然災害や経済危機にも対応可能な財務基盤を構築するとした。

2つめは「持続的な成長への投資」である。既存事業の収益確保と新規事業のための投資は継続。特にCASE領域への機動的な投資を行う。そして統合後3年間で2,000億円の投資を行うことを示唆した。同社の言うCASE領域とは自動車業界で取り巻くキーワードの略称で、「インターネット常時接続機能の搭載」「自動運転」「自動シェアリングサービス」「電動化」、の英語による頭文字を指す。

 3つ目は「資本効率の向上」である。株主の期待を上回るリターンを得るために、中期経営計画にてROEやROICを設定。ROEに関しては10%以上で安定的な維持、向上を目標とし、自己株式の取得を積極的に行うことでも資本効率の向上を目指すとした。

 さらに同社は統合後の2019年1月から6月28日までの間に400億円相当の自己株式の取得を実施することを決議。同時に株主への総還元性向を30%以上とし、2019年度から3年間は50%にすることを決めている。

 同社とアルパインとの統合を進めるには来月5日予定のアルパイン臨時株主総会にて3分の2以上の賛成が必要である。しかしアルパイン株から同社株への交換比率が不公平だという見解が香港の投資ファンドから出ている。さらに同ファンドは統合否決の上で、アルパインから300円(一株当たり)の配当を出すことを提案。一方でアルパイン側からは統合議決の上で、100円(一株当たり)の配当を出すことを提案している。同社としては統合後の業績と株主へのリターンがより十分であることを示し、アルパイン株主から多くの賛同を得たいところだと思われる。(記事:福井廉太・記事一覧を見る

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