若者が独立後に再び実家で生活すると鬱病になる可能性が高まる ドイツの研究

2018年11月26日 21:07

●経済的な理由で実家に戻らざるを得ない若者も

 ドイツのマックス・プランク人口研究所が学術誌『Society and Mental Health』に、若者の鬱病の要因について新たな研究を発表した。

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 それによると、一度独立した後、経済的な理由などから再度両親がいる実家に生活拠点を移した若者は、鬱病を発症しやすいことが判明したという。一度独立を試みたにもかかわらず再び出発点に戻ることは、精神的な苦痛をもたらすという結果になっている。

●1990年代に始まった2万人を対象にした研究

 若者が実家に戻ることは、精神的に何らかの影響を与えるのか。

 このテーマを研究したジェニファー・カプート教授は、米国青年成人健康縦断研究(National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health)のデータをもとに、1990年代半ばから2万人の若者を対象に調査分析を行っている。

教授がとくに注目をしたのは、2002年から2008年に24歳から32歳であった若者のデータである。一度独立した後に再び実家に戻る若者を、欧米では「ブーメラン」と呼ぶ。このブーメラン世代は、鬱病を患う確率が高いことが明らかになったのである。

●1970年代と比べると急増している「ブーメラン現象」

 アメリカのピュー研究所(Pew Research Center)の調査によると、2014年に親もとから独立していた18歳から34歳の若者は全体のわずか32%であったという。ちなみに、1970年代に独立していたこの世代は62%であったことを考慮すると、40年間にブーメラン現象の数も大きく増えたと推測される。

 その理由の大半は、経済的理由による。経済的に独立や自らの家族を持つことが困難な若者が、実家に戻るケースが最も多い。しかし、実家に戻った若者の精神状態に注目する研究は、これまで存在しなかった。

●経済的・社会的独立は精神状態に大きな影響を及ぼす

 新しい研究では、経済的に独立して生活をしている若者は鬱病を患う確率が低くなることが明らかになっている。

 カプート教授は、「経済的にまた社会的に自立することは、成人としての大きな証拠であり、これを成しえなかった人は『人生に失敗した』という思いを抱きやすい。これが、鬱病の原因となる可能性が高い」としている。

 また教授は今後、「ブーメラン現象」が両親にもたらす影響を研究するとしている。成人した子供を家に迎えることは、両親にとっても非常にストレスであることがささやかれている。カプート教授は、これを具体的な数字で分析するとしている。

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