企業主導型保育所、定員割れや閉鎖目立つ

2018年11月26日 08:46

 深刻化する待機児童問題を解消するための起爆剤として期待された企業主導型保育所が暗礁に乗り上げている。企業や従業員のニーズに応え、働く保育士にも大きなメリットがあるとされている企業主導型保育所だが、多額の助成金を当てにしたずさんな経営や定員割れによって閉鎖・撤退が相次いでいるのが現状だ。

 企業主導型保育所は認可外保育所の一つの形態で、平成28年度から始まった新しい制度だ。自治体を介することなく助成金を受け取ることができ、一定の条件を満たせば認可保育園並みの助成金が受け取ることができることもあって注目を集めてきた。複数の企業が共同で設置することも可能で、従業員のニーズにきめ細やかに対応することが可能だ。これまで設置されてきた事業所内保育事業とは異なり、企業主導型保育所は保護者の働き方に合わせた保育事業が可能で企業・従業員双方にとってメリットの大きな保育所だ。さらに企業主導型保育所で働く保育士にとっても、保育士一人あたりの業務の負担が少ない傾向があること、通勤に便利な立地であること、好待遇が期待できることなどの利点がある。加えて企業主導型保育所では任意で地域の幼児・児童を受け入れることも可能だ。

 多くのメリットがあるように思える企業主導型保育所だが、問題点も浮き彫りになりつつある。今年3月末の時点で全国では2,597ヶ所の企業主導型保育所が設置された。しかしすでに少なくとも8ヶ所が閉鎖もしくは撤退を余儀なくされている。助成金をあてにして経営管理がずさんだったり、当初の予測よりも子供が集まらず定員割れを起こしたりしたことが原因だ。さらに人数を水増しして助成金を不正受給した例もある。児童育成協会からの運営費助成金の支払いが遅れ経営に行き詰まる保育所も少なくない。

 企業主導型保育所は適切に運営されれば待機児童の問題だけでなく、人材不足の改善や産休・育休からの職場復帰を支援する大きな一助となる。今後企業の共同運営を促すなど効率的な運営方法を指導すべきだろう。(編集担当:久保田雄城)

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