北海道で発見された土器に大量のコクゾウムシが練り込まれていた 熊本大の研究

2018年11月26日 08:30

 推定500匹ものコクゾウムシが練り込まれていた縄文式土器。2016年、北海道で発見されたものである。これに関する研究報告を、熊本大学大学院人文社会科学研究部の小畑弘己教授が行った。

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 問題の土器は、2016年2月、北海道福島町の館崎遺跡から出土した、縄文時代後期の深鉢型土器である。残存部位だけで417点のコクゾウムシ成虫が含まれており、欠落部位について表面積をもとに推計を加えると、501点のコクゾウムシが入れられていたものと考えられるという。

 コクゾウムシはオサゾウムシ科に属するゾウムシの一種で、一般的には稲の害虫として名高い。縄文時代後期の土器圧痕に既に発見例があり、稲作とともに渡来した外来種であるというのが従来の定説であったが、近年、より古くから日本列島に渡来してきていたらしいという研究報告が上がっている。

 小畑教授は、2010年には種子島の出土品から約1万年前のコクゾウムシ圧痕を発見し、稲の伝播より遥かに以前から、ドングリやクリなどを食害する害虫としてコクゾウムシが日本列島に渡っていた事を明らかにした。さらに2012年には青森県の三内丸山遺跡でもコクゾウムシを発見している。

 そして2013年から開始された館崎遺跡の発掘において、2016年2月、北海道でもコクゾウムシの痕跡を発見したのであるが、それが500匹という大量のコクゾウムシを土器に練り込んだものだったというわけである。

 これがどういう経緯でどう北海道に伝わったものであるのか、またいったい何の目的があって土器にコクゾウムシを練り込んだりなどしたのか、確かな事は分からない。ただ、クリ果実を、津軽海峡を越えて北海道に運ぶルートが存在した可能性があることと、縄文人達がクリの豊穣を願って行った儀式だったのではないかという推定が小畑教授によってなされているのみである。

 研究の詳細は、Journal of Archaeological Scienceに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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