猫の手星雲が放つ電波から糖類を検出 アルマ望遠鏡

2018年11月22日 21:49

 国立天文台は22日、運営するアルマ望遠鏡が猫の手星雲から糖類を検出したと発表した。

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■アルマ望遠鏡が搭載するバンド10受信機

 日本など22カ国が建設に携わったアルマ望遠鏡は、66基のアンテナで構成された世界最大規模の電波望遠鏡だ。2013年3月にチリの標高5,000メートルの高地において開所式が行われたアルマ望遠鏡は、宇宙から飛来する微弱な信号を効率よく受信し伝送するために、10種類の受信機を搭載する。

 受信機のなかでももっとも開発が難しいのが、787ギガヘルツから950ギガヘルツまでの周波数帯をカバーするバンド10受信機だ。日本が開発と製造を担当した3種類ある受信機のうちの1つ「バンド10受信機」は、国立天文台の研究員らによって2009年に開発された。2014年には、電波観測としてはもっとも高い周波数での天王星の観測にバンド10受信機は成功した。天王星のマイナス224度からなる大気が放つ電波をとらえるなど、バンド10受信機は冷たく暗い宇宙の観測に威力を発揮する。

■ハーシェル宇宙望遠鏡の10倍の電波を検出

 今回、米国立電波天文台のブレット・マグワイア氏を中心とする国際研究グループは、アルマ望遠鏡のバンド10受信機を使って、さそり座にある「猫の手星雲」の一角を観測した。猫の手星雲は、まさに巨大星が誕生している現場であり、観測の結果、巨大な“赤ちゃん星”の周辺で、糖類分子グリコールアルデヒドを放つ電波を含め、さまざまな分子が放つ電波(分子輝線)695本の発見に成功した。これは過去に同領域でハーシェル宇宙望遠鏡が検出した電波の10倍に相当する数だという。また重水の蒸気が巨大赤ちゃん星から激しく噴き出すことも明らかになった。

 研究グループは、電波の周波数の分析によって、発見した分子輝線のうち砂糖の1種でもっとも単純な構造をもつグリコールアルデヒド分子を放つ電波が存在することを明らかにした。このほかにも、メタノールやエタノールといったさまざまな有機分子を放つ電波が含まれていたという。

 これまで、これらの分子が放つ電波の実験は実験室等で十分に行われなかった。今後実験室での科学実験によりさまざまな分子の放つ電波のデータが蓄積され、新しい分子の発見につながる可能性があるとしている。

 研究の成果は、米天文学誌Astrophysical Journal Lettersにおいて8月に掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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