ゴーンがgone(去った) カリスマと言われた男の、想定外の退場! (1)
2018年11月22日 21:28
ネガティブな情報があると、人の印象はこんなに変わるのだろうかと、考えさせられたのが19日の夕方だった。今までカリスマ経営者としてやる気と実力がそのまま顔に出ているように見えた日産のゴーン会長(※日産は11月22日の取締役会で、ゴーン会長の代表取締役会長職の解任を決議している)が、容疑者としてテレビ画面に映し出されていると、いかにも悪いことをしたような顔に見えていた。もともと悪相ではあったかも知れないが・・・
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テレビの速報だった。「日産のゴーン会長が金融商品取引法違反容疑で逮捕されそうだ」というテロップに戸惑った。どんな立場の人でも、法に背けば報いを受けるのが法治国家だ。だから、暴行とか傷害であれば、「あんな立場の人でも逆上するとそんなことをするのか」とすんなり納得できる。金融商品取引法に違反というフレーズから受けた連想は、「インサイダー?」だった。一番違和感が強かったのは「逮捕」という言葉だ。それなりの社会的地位にある人物が逮捕されるほどの罪と、金融商品取引法違反容疑とでは、バランスが取れないと感じた人も多いだろう。
その夜に行われた記者会見で日産の西川広人社長は、ゴーン会長が行った主たる不正行為が(1)有価証券報告書に記載していたゴーン会長の報酬が、実際の報酬額を大きく下回っていたこと(2)投資資金を私的な目的で支出したこと(3)会社の経費を私的な目的で支出したことの3点であることと、詳細は捜査中なので控えたいという趣旨の話をした。
従来、役員報酬は役員全員の合計額を有価証券報告書に記載することになっていた。それが、10年3月からは年間1億円以上の報酬を受けている役員は、その氏名と報酬金額を有価証券報告書に記載することが義務付けられた。この10年3月を挟んで日産の役員報酬合計額は26億円から17億円に減少している。ゴーン会長の役員報酬は17億円のうち、半分を超える約9億円だった。コーン会長の巨額の役員報酬がその後大きな意味を持った。
初めて個別の役員報酬が公表されたことで社会の関心は非常に高まり、当時国内最高額となったゴーン会長に対する風当たりは相当なものだった。公表直後の株主総会では「高額すぎる役員報酬だ」とゴーン会長を指弾する声も出た。そのことがその後のゴーン会長の行動の伏線になったのかも知れない。簡単に言えば、見せるから叩かれる、見えなければ文句を言われなくて済むという発想だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)