ISSから帰還した小型回収カプセル タンパク質回収手段として有効と実証
2018年11月20日 22:05
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は19日、国際宇宙ステーション(ISS)より小型回収カプセルを用いて運搬したタンパク質資料について、損傷等がなく、無事回収に成功していたことが分かったと発表した。小型回収カプセルが、ISSからの回収手段として有効な手段のひとつであることが確認されたことになる。
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■小型回収カプセルの実証実験協力を大学に依頼
JAXAは、小型回収カプセルの実証実験に関して、研究機関に協力を要請しており、第一薬科大学からプロスタグランジンD合成酵素、東京大学からセルロース分解酵素の2つのタンパク質が提供された。
プロスタグランジンD合成酵素は、炎症やアレルギー反応を引き起こす物質を合成する機能をもち、筋ジストロフィーなどの治療薬開発につなげることを目的としているという。一方セルロース分解酵素はキノコから生産される植物細胞の細胞壁を構成する主要な成分だ。バイオマスを効率よく分解するため、さまざまな物質に変換する技術の開発に貢献するという。
■カプセルをこうのとり7号機でISSに運搬
2つのタンパク質をISSに届けたのは、9月23日に打ち上げられた「こうのとり7号機」だ。種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIBロケット7号機に搭載されたこうのとり7号機は、9月28日、ISSにロボットアームにより結合に成功した。こうのとり7号機には、小型回収カプセルのほかにも、超小型衛星CubeSatや日本の生鮮食品が搭載されていた。
運搬されたタンパク質試料は、ISSの実験棟「きぼう」にて、4度で結晶化された後、11月6日、小型回収カプセル内にタンパク質試料の入ったガラスの結晶化容器を収納、地上に帰還させた。13日には筑波宇宙センターに結晶化容器が運ばれ、試料の状態を確認した。
その結果、実験で生成された結晶や容器に破損はなく、温度も回収時の4度を維持していたという。試料は今後精査されるものの、ISSからのタンパク質資料の回収手段として小型回収カプセルが有用なことが実証されたこととなる。
東京大から提供されたタンパク質資料は1立法ミリメートルほどの大きさで、宇宙空間で結晶化された。宇宙実験で得られた結晶は中性子回折実験が実施される予定で、日本では初めてだ。今後、高品質なデータ取得を目指し、解析を進めるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)