長谷川香料、18年9月期は増収減益 売上は目標に届かず
2018年11月20日 09:06
長谷川香料【4958】は19日、2018年9月期通期の連結決算を発表した。売上高は前期比3.6%増の497億5000万円と増収だったものの、目標とした507億円には届かなかった。営業利益は同9.8%減の50億5800万円、純利益は同4.6%減の41億円と、販管費の増加や売上計画未達から減益となった。
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今後は、付加価値の高い分野で国内外の収益を維持・向上させることを基本戦略とした。日本・米国・中国、そして東南アジアのカテゴリーごとに戦略を立案。その上で3期後の2021年9月期末目標として売上を567億円、営業利益を69億1,000万円、純利益を52億3,000万円とした。
同社は1903年創業の香料メーカーで、東京都中央区に本社を置く。国内香料メーカーでは第2位、世界では10位に位置している。
基本戦略として、「付加価値が高く採算性の良い調合香料の拡大に注力」「国内市場における収益確保を確実にする」「海外市場における成長を目指す」ことを掲げ、重点項目として、「改革推進」、「人財育成」、「海外展開加速」の3点を挙げている。
これら方針に基づいて、各地域での戦略も立案された。売上の7割以上を占める国内市場では、少子高齢化と健康志向をキーワードとして、営業体制を強化するとし、マーケティング調査を基にした潜在的な需要を先取りすることを目指す。さらに香料の新たな用途拡大と代替香料を開発することで新しいマーケットの開発にも取り組む。
売上の約11%を占める米国では、セイボリー分野、飲料分野に加えて健康分野向けの売上拡大を目指す。そのために買収によるシナジー効果を高めながら、合成香料から天然香料への転換を図るとした。
売上の約14%を占める中国では、人材、設備といった経営資源と組織基盤の強化を図り、売上の拡大を目指す。売上の約4%を占める約東南アジアでは、既存の拠点の連携と新規営業拠点の拡充で売上拡大を目指すとした。
研究開発・設備投資では、中期3カ年計画として、中国での新たに研究棟に10億円、マレーシアでの新工場建設に20億円を投じる計画だ。研究開発費は連結売上高に対して9%の水準で推移している。
香料は生活の質を向上させるツールとして欠かせないものであり、世界的な経済発展に伴ってその需要はさらに高まるものと予想されている。一方で、天然素材の原料は生産地が限られているため価格が高騰することがあり、直近ではバニラ価格の高騰が問題になっている。
それに対して同社は、国内外の企業と提携し新たな生産地の開拓や新素材の開発にも注力しており、2015年からは、ブラジルでのバニラビーンズ栽培プロジェクトにて業務提携を行うなどしている。今後も、高い付加価値を出せる香料に注力することで世界に存在感を示す香料メーカーに成長することを期待したい。(記事:福井廉太・記事一覧を見る)