【どう見るこの相場】「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」か?東証第1部昇格株にあと1カ月半、年内総決算相場を期待
2018年11月12日 09:02
下世話では、「来年のことを言えば鬼が笑う」という。では、再来年のことまで先取りしている株式市場を鬼は大笑いするのだろうか?先般の11月6日の中間選挙の結果、来年1月から米国議会が、上院と下院とで多数派が「ねじれ」、さらに再来年の2020年には大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領が、専管事項の外交・通商問題でより強硬姿勢を強めるのでないかと甲論乙駁しているからである。
となると、鬼が笑う前の年内あと残り1カ月半は、どんな相場ステージとなるのか?重要イベントが通過して悪材料も大方出尽くし、まだ続く決算発表の好業績株を個別物色するなどまだひと山もふた山もあって、アノマリー通りに「掉尾の一振」まで期待できるのか?、それとも来年の米中間の新冷戦などを心配してなお深い深いひと谷、ふた谷に見舞われて年初来のリーターンをすべて吐き出されてしまうのだろうか?依然として悩ましいところで、勝ち組投資家も負け組投資家も、この1カ月半は「売り・買い・休む」のいずれの投資スタンスを選択するかによっては、年間パフォーマンスがプラスとなるかマイナスに転ぶか総決算される大きな分水嶺となる。
同じように残り1カ月半、年内の総決算を迫られる上場会社があるのも間違いない。今年1月以来の東証第1部昇格株である。これも下世話でいうところの「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」かどうか試されるからである。東証1部昇格株は、新興市場から本則市場の東証第2部、第1部とステージアップしてきた銘柄が多いが、この第1部でも、なお新規株式公開(IPO)時の独自ビジネスモデル人気の高株価をキープし、「神童株」としての評価が継続していれば問題ない。しかし、1部昇格が上がりとなって「只の銘柄」へトーンダウンして東証1部市場でその他大勢となっているとしたらブーイング物である。まして市場変更に際して実施した新株式発行・株式売出しなどのファイナンス価格を株価が下回っているとしたら「食い逃げ増資」などの誹りも免れないところだ。ステークホルダーの手前、大納会に向けて何らかの株価対策も発動も宿題になっていて、宿題が経営陣の胸につかえて穏やかには年を越せないと察するのである。
現に、前週末9日に全般相場が急反落するなか、こうした事情からか動意付いたと推測される銘柄が飛び出した。アトラエ<6194>(東1)である。同社株は、今年11月8日に発表した今2019年9月期の連続7期連続の過去最高更新予想業績を手掛かりに、翌9日に319円高の2529円と3営業日続伸し東証第1部上昇率ランキングの第3位に躍り出たが、東証1部に市場変更されたのは今年6月12日である。この市場変更とともに発表した新株式発行・株式売出しのファイナンス価格は、2537円であり、今回の急続伸でようやく同価格目前となったもので、今年10月29日に突っ込んだ株式分割の権利落ち後安値1747円でも諦めず持ちこたえたステークホルダーに報うためにもなお一段の上値追いが予想されるのである。アトラエが一段高となるようなら、東証1部昇格銘柄から「第2のアトラエ」探しも、これから1カ月半、年間パフォーマンスを向上させる投資スタンスとして注目を集めることになるはずだ。
■昇格時のファイナンス価格を下回り押し上げ材料が表面化した銘柄が「第2のアトラエ」候補
「第2のアトラエ」は、株価がファイナンス価格を下回りここにきて、アトラエと同様に株価を押し上げる材料が飛び出した銘柄が有力候補株となる。市場変更順にあげると、トレックス・セミコンダクター<6616>(東1)は、今年11月6日に今2019年3月期第2四半期(2018年4月~9月期、2Q)累計業績の2回目の上方修正を発表して今年3月のファイナンス価格1537円をようやくクリアしたが、きょう12日に予定されている2Q累計業績の発表時に今年8月の今3月期通期業績の上方修正に続いて2回目の上方修正があるか要注目で、株価の上値追いも有力となる。エン・ジャパン<4849>(東1)も、今年11月8日に今3月期2Q好決算を発表しており、株価が、今年6月に実施した株式売出しのファイナンス価格5111円を大きく下回っているだけにキャッチアップが想定範囲内となる。
またジェイ・エス・ビー<3480>(東1)は、今年10月12日に前2018年10月期の上場記念増配を発表し、この配当権利落ち後の年初来安値から500円超幅の底上げをしているが、12月12日にはその10月期決算の発表を予定しており、次期業績ガイダンスへの期待を高めて今年7月のファイナンス価格5886円を目指すことになろう。テンポイノベーション<3484>(東1)も、今年11月1日に今3月期第2四半期(2Q)の好決算を発表しており、今年10月25日を受渡期日とした株式売出しのファイナンス価格1517円を上抜いて一段高が予想される。このほか今年4月のファイナンス価格1887円を下回っているグッドコムアセット<3475>(東1)、同じく6月のファイナンス価格825円を下回っているエンビブロ・ホールディングス<5698>(東1)も、ファイナンス価格へのキャッチアップを強めるに違いない。
■業績上方修正、記念増配の低PER株も昇格後の年初来高値にキャッチアップ余地
市場変更時にファイナンスを伴わず高人気化し、その後の波乱相場とともに人気が後退、投資採算的に割安放置となっている東証1部昇格株も市場変更時の高値奪回に動く展開が想定される。なかでも今年10月~11月に今2019年3月期業績の上方修正と記念配当などを発表した2銘柄は最右翼で、カワタ<6292>(東1)は、昇格後の年初来高値2545円への意識を強めよう。またプロパティ・マネジメントは、今年7月の市場変更承認にもかかわらず折からの不動産株安に押されて年初来安値865円まで下値を探る動きを余儀なくされ、業績上方修正でようやく1155円までリバウンドしたが、なおPERは89倍台と割り負けている。
エスライン<9078>(東1)は、今年11月8日に発表した今3月期2Q業績が期初予想を上ぶれて着地したが反応は限定的にとどまりPERは11倍台の評価にしか過ぎず、昇格後の今年4月の年初来高値1451円が、奪回目標となる。第一稀元素工業化学<4082>(東1)は、今年8月に今3月期第1四半期の増収増益業績と昇格記念配当を発表し、PERは9倍台と割り負けが目立ち、きょう12日に今期2Q決算の発表を予定しており、この業績動向次第では8月につけた昇格後高値1453円抜けも早そうだ。このほか、朝日インテック<7747>(東1)は、すでにファイナンス価格4272円を上回っているが、11月14日早朝に発表される予定の世界の機関投資家がベンチーマークとしているMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄の定期入れ替えでは、一部国内証券から新規採用の候補株の下馬評に上がっており、当確なら好需給要因から10月22日に買い進まれた年初来高値5380円の更新も有力となろう。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)