減らぬ介護離職者 経済損失は年間6500億円
2018年11月12日 09:02
総務省が発表した「平成29年就業構造基本調査」によって、2016年10月から17年9月までの1年間で、家族の介護を理由に仕事を辞める、いわゆる介護離職者が9万9千人に上ったことがわかった。政府は介護離職ゼロを目指して育児・介護休業法の改定を行ってきたが、いまだ効果が限定的であることがわかった。
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日本国内で介護保険のサービスを受けている高齢者の数は約640万人だ。高齢者全体に占める割合は約18%で、かなりの割合の高齢者が要介護・要支援対象となっていることがわかる。前回行われた「平成24年就業構造基本調査」では介護をしている人の人数は約557万4千人、そのうち過半数にあたる約291万人は働きながら介護をしていた。この時の介護離職者の数は10万1千人であったため、育児・介護休業法改定などの対策後もその効果は薄いと言えるだろう。この調査に基づいて経済産業省が行った試算によれば、約10万人の介護離職者が経済に与える損失は年間6500億円にも上る。日本経済に与える影響だけでなく、離職者・要介護者の生活の質の低下やいよいよ深刻化する人材不足へのさらなる打撃も懸念される。
政府は介護離職者の増加を食い止めようと必死だ。厚生労働省のホームページでは「介護離職ゼロ ポータルサイト」と称して、介護保険制度や介護休業制度の周知を行っている。介護休業制度は要介護にある家族が1人いれば、最大で93日までの休みを3回に分けて取得できるというものだ。休業期間中は有給とはならないが、国から介護給付金が支給される。さらに要介護者1につき年間5日の休暇を取得できる介護休暇制度も利用可能だ。とはいえ「貝漁休業制度の利用状況」の調査によれば、実際に介護休業制度を利用した人の割合はわずか1割強にとどまっている。
介護離職は国家経済へ悪影響を与えるだけでなく、離職者本人や要介護者の負担を増やすものとなる。介護離職後に再就職することも容易ではないため、いかに介護離職を抑制するかが重要なポイントだ。国、企業、介護者それぞれが介護休業制度を利用しやすくなるようなさらなる取組みが必要なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)