消費増税分を価格に転嫁、企業の5割以上
2018年11月9日 09:39
東京商工リサーチが実施した「消費増税に関するアンケート」によれば、2019年10月に予定されている消費増税後に景気が悪くなると回答した企業は有効回答の57.8%に上り、増税に対する企業の不安を反映した結果となった。さらに消費増税分すべてを価格に転嫁すると回答した企業も過半数を占め、消費増税が消費者を直撃する結果となりそうだ。
消費増税分のすべてを価格に転嫁するという傾向は特に中小企業で顕著だ。資本金別の分析では、増税分すべてを価格転嫁すると答えた資本金1億円以上の企業は49.3%であったのに対し、資本金1億円未満の企業では55.3%となっている。1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際には、増税分の価格への転嫁を拒否する企業が相次ぎ問題になったことから2013年に消費税転嫁対策特別措置法が施行された。過半数の中小企業が2019年に行われる増税分すべてを価格転嫁すると回答した背景には、消費税転嫁対策特別措置法が企業の間に浸透してきた一つの証拠と言える。消費税転嫁対策特別措置法ではいったん契約した金額を後で減額させる行為や税率引き上げ前の価格で納品させる買いたたきなどの行為も禁止されている。
東京商工リサーチが実施したアンケートでは、価格転嫁を検討している企業が多くいる一方で消費増税の準備をしていると回答した企業はわずか28.1%であった。会計・経理システム変更の見直しがもっとも多く行われている対策だが、既存商品の見直しや新商品の開発などに着手している企業は全体のごく一部でしかない。消費増税によって消費者はこれまでと同じ商品を増税分が価格転嫁された状態で購入せざるを得なくなるかもしれない。
政府は消費増税によって急激に価格が上昇したという印象を消費者が持たないようにするため、小売業者に対して増税前から徐々に商品やサービスの価格を引き上げるよう促す方針だ。消費増税後の急激な消費の冷え込みを防ぐために対策を講じなければならない。企業も消費者も大きなダメージを受けることなく増税に対応するためには、事前の周到な準備が必要なのだ。(編集担当:久保田雄城)