大学院生の発見が出発点 彗星「ホームズ」大増光の謎に迫る 京産大の研究
2018年11月2日 21:56
太陽系の短周期彗星「ホームズ」は2007年に17等星から2等星へと大増光したものの、その原因には謎が残る。京都産業大学の研究グループは1日、ホームズ彗星が太陽系のなかでも太陽から遠い冷たい場所で誕生し、多くの揮発性物質を含む可能性があることを発見したと発表した。これにより、増光した原因の究明に近づくことが期待される。
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ホームズ彗星は1892年に英アマチュア天文家エドウィン・ホームズによって発見され、その名にちなんで「ホームズ」と名付けられた。公転周期が約6.9年の短周期彗星であるホームズは通常は17等星ほどの明るさで、肉眼では確認できない。
ホームズがにわかに注目を浴びたのは2007年、たった2日間で17等星から2等星へと大増光を起こしたからだ。このような急速な増光が彗星で発生することはほとんどないという。肉眼で確認できるほどの明るさになったこの増光自体は、大量の塵(ダスト)放出により起こったということが、その後の研究で分かっている。だが、そのような大量の塵を放出した爆発的な増光がなぜ行ったかという原因に関しては、いまだに議論が続いていた。
京都産業大学が運営する神山天文台の研究者を中心とする研究グループは、ホームズ彗星から放出された塵の成分に着目、2007年に大増光を起こしたときにすばる望遠鏡で観測された分光データを解析した。その結果、ホームズ彗星が放出した塵には、ほかの彗星に比べて、「アモルファス」と呼ばれる、結晶構造をもたない固体のケイ酸塩が多く含まれることが明らかになった。ケイ酸塩は太陽の近くで加熱されると結晶質に変化するため、ホームズ彗星がほかの彗星に比べて太陽から遠い冷たい場所で誕生した証拠だという。
ホームズ彗星の増光が塵によるものだと突き止めたのは、当時の京都産業大学の大学院生だった。ホームズ彗星が増光した直後の分光観測を実施して解明したのだが、今回の発見は、当時の資料をさらに詳細に研究してわかったものだ。発見は、ホームズ彗星が突然増光を起こした原因に迫るものであるが、アモルファスのような多くの揮発性物質を含む彗星の場合、固体からガスへと昇華する際に、爆発的な塵を放出する可能性があるという。
研究の詳細は、プレプリントサーバArXivにて公開、米天文学誌Astronomical Journalに掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る)