産総研や光岡自動車、木材由来成分で車の内外装部品 実車への搭載試験開始

2018年10月29日 19:46

 木材が新たな時代において新たな脚光を浴びようとしているのかもしれない。産業技術総合研究所(産総研)、森林研究・整備機構森林総合研究所(森林総研)、宮城化成、そして光岡自動車の共同研究グループはスギから抽出した「改質リグニン」を樹脂成分として用いた、ガラス繊維強化プラスチック製の自動車内外装部品を、世界で初めて実車に搭載し評価試験を開始した。

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 リグニンというのは木材を構成する主要成分のひとつである。木材の成分のうち3割ほどを占めており、芳香環を化学構造上含んでいるため、木材に由来するものでありながら、耐熱性と難燃性を発揮する優れた材料となる、という可能性が指摘されている(指摘されているだけで、リグニンを利用したマテリアルの本格的商用化は世界の誰も実現していないとのことだが)。

 さらにこのリグニンからつくる改質リグニンなるものであるが、まず森林総研が、スギという日本固有種のリグニンが均質な性質を持っていることに注目した。そしてスギ由来の機能性リグニン素材の開発を進めた結果、開発されたのが、ポリエチレングリコール(PEG)にスギ木材を加えて、少量の酸とともに撹拌するとできる改質リグニンである。木材中のリグニンは分解され、同時に分解されたリグニンはPEGと結合、物理特性が変化するのだ。

 さて、これによって自動車内装部品ドアトリムを試作したのだが、温度変化、降雨、紫外線など、様々な環境において実車で試験をすることが望まかった。そこで、従来よりガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を用いた自動車を生産している光岡自動車に話が持ち込まれ、合意が得られ、共同で試験を行うという運びになったのである。

 具体的に何を作ったかというと、ボンネット、ドアトリム(4枚)、スピーカーボックス、アームレストである。それを小型車に実装し、10月から世界初となる実験を開始した。車内環境(温度・湿度)を自動計測するとともに、天候と走行の記録もつけ、部品の計時的変化を評価して実用上の問題点などを洗い出す予定であるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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