JAMSTECとNHK、深海探査用の8Kスーパーハイビジョンカメラを開発
2018年10月29日 16:23
海洋研究開発機構(JAMSTEC)海洋工学センター海洋基幹技術研究部の石橋正二郎主任技術研究員とNHKの共同研究開発グループは、深海用8Kスーパーハイビジョンカメラ(Underwater 8K Super Hi-Vision カメラ。以下、U8K-SHVカメラ)の開発に成功し、実際の深海底熱水域において超高精細映像を取得することに成功した。
【こちらも】小笠原海溝の底の超深海水を成分分析、JAMSTECが新鋭船「かいめい」で
既存の深海探査に適用されてきた海中カメラ技術においては、ハイビジョンカメラが主流であった。当然のことながら、ハイビジョンカメラの画質・解像度には限界があり、海底生物や鉱物の詳細を正確に把握し切ることはできない。
そこでより精細度の高いカメラが必要とされたわけだが、単純に高機能なカメラを導入すればそれでよいというほど事は単純ではない。深海での映像レベルの高度化には、海中における大容量光伝送技術の高速化、カメラ光学系や照明技術の最適化が必要不可欠であったのだ。
8Kカメラはハイビジョンカメラの16倍の解像度を持つ。その8Kカメラを深海仕様にするために、上述の技術の各項目の研究・開発に、JAMSTECとNHKは統合的に取り組んだ。カメラ光学系においては光軸屈折の保障をし、また海中における光学伝播特性(赤色波長光の減衰)を担保する照明装置の開発にも取り組んだ。
他にも、カメラから出力される大容量のデータを、深海から船の上まで高速・高品質に伝送する100Gbps光伝送装置も新たに開発した。
結果、2018年にU8K-SHVカメラは完成。同年2月に浅海域での基本特性試験を行い、さらに7月、深海無人探査機「かいこう」にU8K-SHVカメラを搭載、小笠原海域の深海底で性能評価試験ならびに海底撮影試験を実施したのである。結果は上々で、これは国際的に見ても、世界初の開発実績となったという。
今後は、この深海探査技術を世界標準とすべく、深海映像の標準化に取り組んでいく方針だ。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)