イチョウのような生きた化石たちはどう生き延びたのか、千葉大などの研究
2018年10月29日 11:33
イチョウが「生きた化石」と呼ばれる存在であることをご存知だろうか。東アジアにはイチョウをはじめ、メタセコイア、カツラ、コウヤマキなど生きた化石と呼ばれる古い植物が各種残存しているのだが、千葉大学が参加した国際研究グループは、これらの植物がどのような生態学的または気候学的な条件のもとで現代に生き延びたのかを明らかにした。
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研究の中心となっているのは雲南大学ののCindy Q. Tang教授。そのほか、森林総合研究所国際連携・気候変動研究拠点の松井哲哉室長と大橋春香特別研究員、千葉大学大学院園芸学研究科百原新教授、東京情報大学総合情報学部富田瑞樹准教授らが研究に参加した。
さて、イチョウの話に戻るが、イチョウは日本でこそありふれた街路樹と認識されているが、そもそもこのイチョウ科のなかまが地球上に繁栄していたのは中生代から新生代(約2億5,000万年~約6,600万年前)にかけてのことであり、氷河期においてほとんどが絶滅し、現在ではイチョウ1種を残してすべてが絶滅している(ちなみにこのイチョウも絶滅危惧種扱いである)。
東アジアにはそのほかにも何種類か、生きた化石と呼ばれる種がある。これらの種の現在の分布情報を地図上に可視化したところ、これら「生きた化石」の植物は、主に中国南西部からベトナム北部を経て日本へと至る湿潤な亜熱帯・温暖帯域に分布していることが明らかになった。
また、これらのエリアは、氷河期を含めた気候変動を勘案しても、これら遺存植物の生育にとって安定した環境を提供し得、従って氷河期などの環境変動期などにおける「安定した避難場所」を提供していたものと考えられるのだという。
なお、研究の詳細は、Nature Communicationsにおいてオンライン公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)