恒星が放つ強力なフレアが惑星に与える影響は? 米大学の研究

2018年10月23日 17:08

 英字ニュースでしばしば見かける「hazmat(hazardous materials items)」。環境や人類に害を及ぼす物質を指すが、「HAZMAT」と呼ばれるプログラムを掲げるのが、米航空宇宙局(NASA)だ。恒星の一進化形態である「赤色矮星」が発生するフレアが太陽のそれよりも遥かに驚異的だという報告が、米アリゾナ州立大学の天文学者らから構成される研究グループによって発表された。

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■赤色矮星が放つ強力なフレア

 太陽より軽い質量をもつ恒星は、3000度前後の赤色矮星へと進化する。太陽よりも暗い赤色矮星だが、その数は銀河に存在する恒星の約4分の3にも及ぶ。

 太陽で発生する爆発現象である「フレア」は、恒星で発生する磁場のゆがみによって発生すると考えられる。赤色矮星から放たれるフレアは太陽と比較し、強い紫外線を放射する。

■フレアが惑星の大気を吹き飛ばす

 生物が生息できる場所である「ハビタブルゾーン」をもつ惑星は、天の川銀河には地球以外にも存在する。赤色矮星は恒星としては低温のため、その周囲を公転する惑星はハビタブルゾーンをもつ場合がある。太陽にもっとも近い赤色矮星である「プロキシマ・ケンタウリ」を公転する惑星がその一例だ。

 しかしながら、幼年期の赤色矮星は活発なためフレアから強力な紫外線を放射、惑星の大気に影響を及ぼし、大気を一掃させうる。2017年に地球に到達した太陽フレアは通信機器に影響を及ぼすことが懸念された。太陽を含めた恒星が及ぼす強力なフレアの研究が期待される。

■幼年期の赤色矮星のフレアが及ぼす影響

 HAZMATプログラムは、赤色矮星のような低質量の恒星を公転する惑星でのハビタブルゾーンの理解に貢献する。今回の研究発表では、12個の幼年性の赤色矮星から発生したフレアが調査された。幼年期・壮年期・老年期の3タイプの赤色矮星の紫外線を観測可能なハッブル宇宙望遠鏡を活用し、老年期の赤色矮星と比較してフレアの活動に大きな違いがみられることが明らかになった。

 赤色矮星が放つ巨大なフレアを観測できる可能性は低い。研究グループの中心メンバーである米アリゾナ州立大学のパーク・ロイド氏は、「われわれが目にできるのは1度か2度までだ」という。

 今回幸運にも大量の紫外線を放射する巨大フレアを観測できた。ロイド氏はこう語る。「われわれが観測した巨大フレアは、惑星の大気をはぎ取るほど強力だ。しかし、惑星の生命を死に貶めるとは必ずしも主張できない。別のメカニズムによって惑星の大気が補充されるかもしれないし、われわれが想像するのと異なる生命が宿っているかもしれないからだ」。

 研究グループは今後、壮年期と老年期の赤色矮星から放たれるフレアを分析、幼年期のものと比較を行う。これによりフレアが放つ紫外線がハビタブルゾーンに与える影響への理解が深まるとしている。

 研究の詳細は8日、プレプリントサーバーarXivにて公開、Astrophysical Journalにより受理された。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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