思い浮かべている形が人によってずいぶん違う「副業・兼業」
2018年10月22日 18:21
大手企業を中心に、副業・兼業を解禁する動きが広がりつつある一方で、厚生労働省所管の労働政策研究・研修機構の調査によれば、4分の3以上の企業で、社員の副業や兼業について認める予定がなく、その理由として、認めない企業の82.7%が「過重労働で本業に支障を来す」と回答しており、企業側の抵抗感が根強い様子がうかがわれるとのことでした。
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私は企業が社員の副業・兼業を禁止するからには、相応の報酬と安定を提供しなければならないし、それが無理なら一定の条件の下で、やりたい人にはやらせれば良いという考えですが、そう思う理由として、自分がいくつかの企業と同時並行で仕事をしている、まさに「複業」を実践しているからであり、なおかつ雇われていない事業者の立場ということもあるかもしれません。
「複業すること」それ自体が本業なので、企業関係者の感じ方とは、少しずれているところがあるでしょう。
私がいろいろな企業の人と副業や兼業に関する話をしていて思うのは、人によって思い浮かべているものがずいぶん違うということです。
私が会社員の副業として思い浮かべるのは、自分の空き時間を使った個人事業のようなものでしたが、ある人は二つの会社から雇用される「ダブルワーク」を思っていました。そうなると、確かに会社としてはその人の就業時間管理が難しくなりますし、「過重労働」という懸念もわかる気がします。
会社に在籍したまま、今まで培ってきた人脈や関係先を使って、例えば会社を通さずに自分で直接仕事を請けてしまうような不正を心配する人もいました。確かに競業避止という点で、何らかのルールや罰則は必要になるのでしょう。性善説だけで解決するものではありません。
こう見ると、副業解禁といってもいろいろ面倒そうなことが多く、未だに消極的な会社が多い理由もよくわかります。
一方、実際に副業を雇用ではなく事業でやっている人に話を聞くと、過重労働については全く心配ないと言います。「それくらい調整できなければ副業なんてやらない」そうです。自分で裁量を持った副業、兼業であれば、私も過重労働は起こらないと思います。自営業の過重労働は、売上不足への対応など、それが本業だから起こることか、顧客圧力などで自分に裁量がない場合が大半です。
先の調査結果を見ていて気づいたことがあります。
労働者に対する調査結果では、副業・兼業を「新しく始めたい」との答えが23.2%、「機会・時間を増やしたい」が13.8%だった一方、「するつもりはない」が56.1%と半数を超えていました。
副業をしたい理由では「収入を増やしたい」が85.1%とトップで、逆にしたくない理由は「過重労働で本業に支障を来す」が61.6%、「家族や友人と過ごす時間を重視する」が56.1%でした。
つまり、半数以上の人は「今以上仕事の時間を増やしたくない」「プライベートの自由な時間を減らしたくない」と考えており、副業を解禁したからといって、みんながみんな、それほど前向きではないということです。
反対に副業をやりたい人は、「自分の自由な時間を使って、別の仕事で収入を増やしたい」ということですが、それは今まで余暇にしていた時間を仕事に使ってみるということで、あくまで自分で融通が利く範囲内でのことです。
たぶん過重労働にはならないし、もしそれほどまでに副業が忙しくなったとしたら、それはビジネスセンスがあるということで、本業と副業が入れ替わるくらいの話になりますが、そこまでの成功はめったにありません。
そうやって考えると、私は副業解禁にそこまで抵抗感を持つ必要もなさそうに思います。ただ、いろいろな人から話を聞く限りでは、定着するにはまだ少し時間がかかりそうな気がします。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。