シジュウカラの雌は確実な妊娠の為に浮気をする 北大の研究

2018年10月15日 08:14

 鳥類はその90%以上がつがいを持つが、ほとんどの種において浮気をする。専門的にはこれを「つがい外父性」と言うのだが、ともあれ、この性質がどのような状況で発生するかについて、北海道大学大学院地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授らの研究グループが研究報告を行った。

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 おしどり夫婦、という言葉がある。かつて、つがいで繁殖をするオシドリなどの鳥類は、パートナー以外の相手との交尾を一切せず、生涯に渡って「理想的」(あくまでも人間の道徳観にとっての理想という意味に過ぎない事は留意が必要であるが)な雌雄関係を維持すると考えられていた。

 これが覆ったのは1990年代頃のことである。この頃、遺伝子診断による親子鑑定が可能になり、実は(オシドリも含め)多くの鳥類において、無数の「婚外子」が野生化で存在していることが明らかになったのだ。

 さて、事実は事実であるとして、それにどのような生物学的意味合いがあるのかとなると難しい問題となる。多くの仮説が提唱されたが、空を飛ぶ野生の鳥の生活環境を操作して実験を行うことが困難であるなどの問題があって、これまでこの問題に対する詳しい研究はほとんど行われてこなかった。

 しかし今回、北大の研究グループは、繁殖期において複数回繁殖するシジュウカラを利用し、野外操作実験を行った。偽の卵を作って、卵が孵化しなかったとシジュウカラが認識する状況を構築したのである。

 結果として、1回目の繁殖において子供がうまく生まれなかったつがいにおいて、メスが「浮気」をする可能性が高まるという、理論的には予測されていた通りの事実が実証されたのである。

 ちなみに、他の理論的予測としては、「メスがより優れたオスを選ぶために浮気をする」というものもあったのだが、そちらではなく「繁殖を確実に成功させるため」に浮気が起こる、という仮説の方が支持された形だ。

 なお研究の詳細は、行動生態学の専門誌Behavioral Ecologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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