複数の「偽論文」が査読すり抜け学術論文誌に掲載、新たな「ソーカル事件」か
2018年10月10日 10:13
偽名などを使って書かれ内容はデタラメな「偽論文」が、論文誌に多数投稿されていたことが明らかになった。これら偽論文は性差別や人種問題など、あえて議論になりそうなテーマを狙って書かれていたという。投稿された論文の一部は査読を通過して実際に論文誌に掲載されていた(Wall Street Journal、Science Alert、Economist、これを指摘する研究者のTweet)。
実際に投稿された偽論文の内容はNational Postで紹介されているが、「肥満は時間や努力によって作られるものであり賞賛されるべきものだ」などとして「Fat Bodybuilding」なるものを提案するものや、ドッグパークにおいて犬や人間を観察した結果から「レイプ文化」を分析したと主張するもの、アドルフ・ヒトラーが自説を記した著書「我が闘争」の一部を元にフェミニズムについて述べたものなど、ジャンルは多岐にわたる。
Wall Street Journalの記事ではこの論文の著者や論文を掲載した論文誌の編集者に取材した結果が記されているが、その著者の1人は2017年8月より意図的に科学的根拠のない20の「偽論文」を作成したことを認めており、うち7つが査読を通過し、4つが論文誌に掲載されたという。著者らはこの行為について、アカデミック分野における外部からの批判を受け入れないという文化を批判するために行なったと主張している。
また、取材を受けた編集者らは論文について適切に査読は行なったものの、偽論文であるとは気付けなかったと述べている。掲載された論文はこの問題を受けて撤回されている。
偽論文については1994年にニューヨーク大学のアラン・ソーカル教授がデタラメな論文を作成して公表した「ソーカル事件」があり、今回の事件でソーカル事件を思い起こす人も多いようだ(Togetterまとめ)。