派遣切りは増加、正社員化は遠く

2018年10月10日 12:32

 2015年9月に施行された改正労働者派遣法から3年が経った。この改正労働者派遣法では組織単位で同じ労働者を派遣できる期間を3年と定めており、18年9月末でこの期限を迎える労働者が現れることとなった。派遣社員をより好待遇の正社員として企業が雇用することを目的として改正された労働者派遣法だが、実際の道のりは想定よりも厳しそうだ。

 HR総研のアンケート調査によれば1001人以上の大企業では92%が派遣社員を活用しており、中小企業でもその割合は59%だ。大多数の企業は派遣社員を活用して業務を行っているのが現実だ。改正労働者派遣法では、これらの企業が3年以上同じ人を派遣社員として活用する場合には直接雇用を派遣元から依頼されることもある。派遣社員の側からしても、正社員としての雇用は非常に魅力的だ。給与面や待遇面ではもちろん、福利厚生なども充実しているため、派遣後3年で正社員として働けることを希望する派遣社員は少なくない。正社員とまではいかなくても、雇用期間の定められない向き契約労働者としてより安定した仕事がしたいというのは普通の願いだろう。

 では改正労働者派遣法施行後3年が経った今、直接雇用に踏み切る企業が増加しているのかといえばそうではない。むしろ3年経過後派遣切りをする企業が増加しているのだ。派遣先の企業には直接雇用をする義務はなく、新たな社員を派遣してもらうこともできるため正社員化が当初想定されたほど進んでいないのだ。さらに企業が派遣元を通して直接雇用を依頼すると高額の紹介料を請求されることもあり、企業側も二の足を踏んでいる。さらにこれまで「旧26職種」と呼ばれてきたソフトウェア開発や通訳など3年の制限の例外とされてきた職種でも改正労働者派遣法が適用されたため、派遣社員の中には3年の雇用期間の終了時に失業する危機感を持つ人も多い。

 企業が人件費削減のため正社員としての雇用をためらうことは理解できる。しかし改正労働者派遣法の問題点が浮き彫りになった今、労働者と企業の双方を守るための枠組みが必要になってくるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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