成長する自動車向けLED市場 明るさだけではない課題は

2018年10月7日 22:05

 LEDは今や、我々の生活には欠かせないものになった。日本ではLED市場は横ばい状態とも言われているものの、英国の調査会社インフィニティリサーチ社の調査レポート出版部門であるTechNavio(テクナビオ)のアナリストは、2018年から2022年にかけて、世界のLED市場が15.98%の年平均成長率で推移すると予測しており、今後も世界規模での成長が見込めそうだ。

 中でも、注目が高まっているのが自動車向けのLED製品だ。2017年2月に発表した富士キメラ総研の調べでは、2016年頃から自動車の電装化が進み、LED製品の需要が加速していることで、LED製品率が15%を超え2020年には30.7%にまで達するとみている。

 車載用途のLED製品は多岐にわたる。ヘッドライトやリアランプ用はもちろん、メーターシステムへの導入も進んでいる。同社の予測ではメーターシステム搭載LED数は2020年には14億3120万個に拡大すると予測している。

 自動車のメーター部分へのLED実装が進む一方、いくつかの問題点も指摘されてきた。一つは、表示アイコンの増加やディスプレイ大型化に伴って、LED実装スペースが縮小してしまっているということ。そして、隣接部への光漏れ対策の必要性。さらには車内が高温になることで進んでしまう光の劣化対策だ。そんな中、日本の電子部品企業大手ロームが、これらの課題を一気に解決するLED製品を開発して注目を集めている。

 同社が今回、開発に成功した小型・高出力の面実装レンズ付きLED「CSL0901/0902 シリーズ」は、光源の位置を一般品の0.18mmから0.49mmへと高く設計したことで、光漏れを改善。一方で、従来のリフレクタ付LEDに比べて約1/18小型化(体積)を実現している。

 また、劣化対策としては、青色などに新開発のモールド樹脂を採用。高温通電試験時においては、従来品と比べて約80%光度残存率を改善することに成功している。

 さらに、工程内でのつくり込みの精度を向上させることにより、小型でありながら、従来品と比較して4.5倍の高度アップ、高級車で使用される高光度品を含めると、なんと5~7倍の高度アップを実現した。また、高度がアップした効果で、電流値をこれまでの4分の1程度に低減できるため、アプリケーションの省電力化にも貢献するという。

 これまで、シートベルトサインや、半ドアサインなどのインジケータ部において、点灯マークからの光漏れの影響で、点灯していないマークまで点灯しているかのように見えることがあった。光漏れ対策として光を上方向へ向けるリフレクタ付LED製品が搭載されるものの、小型化が難しく、電装化が進む近年の課題となっていた。ロームが開発した「CSL0901/0902 シリーズ」が採用されると、点灯マークのみ明るくなるので、これらの問題が解消され、誤認の予防と実装スペース削減によって自動車の高機能化にもつながると思われる。

 高機能化や電装化が進む自動車市場だが、便利になった分、安全性が損なわれるようなことがあってはならない。LEDの劣化や見えにくいことによる誤認などは、命にかかわる事故に発展する可能性もある。それだけに、今後は益々、部品一つ一つにまで信頼性の高い製品が求められるだろう。(編集担当:藤原伊織)

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