京大、世界で初めて雄のいない社会を持つシロアリを発見
2018年10月4日 21:38
京都大学の矢代敏久農学研究科特定研究員(現・シドニー大学研究員)、松浦健二同教授、小林和也フィールド科学教育研究センター講師らの研究グループは、日本固有種のナカジマシロアリというシロアリが、一般的にはオスとメスが混在して暮らすシロアリの中にあって、メスのみしか存在せず単為生殖で繁殖しているという事実を明らかにした。
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そもそもシロアリというものはアリの一種であるという認識の人が多いのではないだろうかと思うが、実はこれがかなり違う。見た目や生態に似た部分は確かにあり、そして名前はどちらもアリであるが、蟻はハチ目スズメバチ上科アリ科に分類され、白蟻は昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科、もしくはシロアリ目(近年の研究で、ゴキブリの近縁種であったことが明らかになった)に属する。
さて、両者とも社会性昆虫であることに違いはないが、その両者の社会の違いの中で最大のものは、アリの社会はメスの社会(オスは存在するが、繁殖の際以外ほとんど社会的役割を持たない)であり、シロアリの社会は両性社会で、オスメスともにワーカーや兵を構成するということである。
ところが、本州から沖縄にかけて生息する日本固有種であるナカジマシロアリについて、知られている生息地のほぼすべてで収集と観察を行ったところ、四国と九州のナカジマシロアリにはメスしかおらず、オスがいないということが明らかになった。メスだけで社会を営んでいるシロアリの発見は、これが世界史上初となる。
また、単為生殖のナカジマシロアリと有性生殖のナカジマシロアリの両群を比較した結果として、オスの喪失は進化の過程においてたった一回だけ生じた現象であることや、単為生殖群はオスを喪失する全段階に、単為生殖化への進化を促す複数の特長を持っていたことが明らかになったという。
研究の詳細は、英国の科学誌「BMC Biology」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)