プラズマ波動によるエネルギー輸送を世界で初めて実証 名古屋大ら

2018年10月2日 21:08

 名古屋大学などの研究グループは、宇宙空間でプラズマの波を介して粒子のエネルギー輸送の実証に成功したと発表した。

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 研究に携わったのは、名古屋大のほか、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や京都大学などから構成される国際研究グループだ。米航空宇宙局(NASA)の「Magnetospheric Multiscale(MMS)衛星」と呼ばれる、磁場によるエネルギー輸送を研究目的とする衛星からのデータが研究に用いられた。4機の衛星に搭載された低エネルギーイオン計測装置(FPI-DIS)等で観測データを解析した結果、地球付近での宇宙空間でプラズマ波動によってエネルギーが輸送されることを確認した。プラズマ波動によって、異なるプラズマ間でエネルギー輸送が生じていることを世界で初めて確認したことになる。

■宇宙空間を満たすプラズマ

 宇宙空間は完全な真空状態ではなく、「プラズマ」と呼ばれる荷電粒子で満たされている。地球周辺でも極地にはエネルギーの高い荷電粒子が存在、オーロラを光らせるという。磁場や電場の変化によりプラズマ間ではエネルギーのやり取りが行われると考えられているものの、これまで観測に基づいて実証されなかった。

 磁場や電場による生じるプラズマ波動は、人工衛星などに障害を及ぼす放射線帯の超高エネルギー電子の生成に関与するとみられている。JAXAが2016年12月に打ち上げた探査衛星「あらせ」が、プラズマ波動や電子を継続して観測、解析をおこなっているという。

■プラズマ間で起きるエネルギー輸送の実証に貢献

 MMS衛星は2015年9月に、高度約6万キロメートルにおいて、「電磁イオンサイクロトロン波動」と呼ばれるプラズマ波動を観測した。またMMS衛星に搭載されたFPI-DISにより、イオンの観測に成功。観測されたプラズマ波動とイオンを解析した結果、電磁イオンサイクロトロン波動を介して水素イオンからヘリウムイオンへとエネルギーを供給していることを確認した。このことは、宇宙空間に存在するプラズマ間で想定されるエネルギー輸送を、観測に基づいて実証する第一歩となるとみられる。

 研究の詳細は、米科学誌Scienceにて9月7日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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