日本の常緑広葉樹は最後の氷河期をどう過ごしていたか、阪大などの研究
2018年10月2日 11:51
約2万1,000年前の最後の氷河期(最終氷期最寒冷期)において、日本列島の常緑広葉樹の代表的な存在であるシイのなかまスダジイが、どうやって生き延びたかという問題について、大阪大学などの研究グループが発表を行った。
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研究グループに名を連ねているのは、森林研究・整備機構森林総合研究所(森林総研)、大阪大学、岐阜県立森林文化アカデミー、筑波大学、京都大学、首都大学東京ら。
そもそも古い推論モデルでは、最後の氷河期におけるスダジイは、南西諸島や九州南部などの温暖な地域に追いやられ、氷河期が終わったあとそこから再度日本列島全域に分布を広げてきたものと考えられていたし、花粉化石の記録もそれを裏付けていた。
しかし、今回の研究では、日本列島の少なくとも四つの地域においてスダジイは最後の氷河期を生き延びており、その中には、日本海側ならびに東日本の太平洋岸が含まれていることが明らかとなった。
最後の氷河期と呼ばれるものがどれくらいの寒さであったかというと、気温が5度から7度ほど今より低く、簡単にいえば現在東京があるあたりが現在の札幌程度の寒さだったということである。
研究では、常緑広葉樹スダジイが最後の氷河期にどこで生存していたかを、遺伝的多様性の解析に基づく複数のモデルの構築によって検討した。その結果として、琉球グループ(奄美群島以南)と西日本グループ(九州南部)のほかに、西日本グループから分離した東日本と日本海のグループがあったことが分かったのだ。
そしてその成立時期を分析したところ、最後の氷河期よりも前であることが確かであったので、この四つのスダジイのグループが氷河期を生き延び、その後日本列島に広まって行ったと考えられるのである。
なお研究の詳細は、Heredity誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)