自殺未遂は繰り返される 身体の持病が自殺念慮を持続させる
2018年9月30日 22:46
日本は自殺大国としてあまりにも有名だ。2017年の日本の自殺者数は2万1140人で、近年減少傾向に転じたものの世界的には極めて高い水準を維持している。
13年に国連は日本の労働環境の改善に関し勧告を出したが、これは過労死の問題が人権問題として国連が強い関心を持ったからだ。過労死は身体疾患による突然死のケースも多いが、また脳・身体の疲弊から派生した精神疾患に基づくものも少なくない。
13日、日本財団が全国4万人超を対象とした自殺意識に関する大規模調査の結果を公表している。この調査は16年にも実施され今回で2回目、今回は追跡調査としても行われており、より長期的で詳細な自殺念慮を持つ者の心理的状況が明らかにされている。
レポートによれば16年調査で自殺念慮があると答えた者は24%もおり、その内3%が1年内に自殺念慮を持っている。今回の追跡調査でこの3%のうち67%が現在でも自殺念慮があると回答している。
実際に自殺未遂に至った者についてみると、16年調査で自殺未遂を経験した者6.4%のうち1年内に自殺未遂を経験している者は0.4%で、今回の調査でこのうちの55%が再び自殺未遂を経験している。コアな自殺念慮を持つ者はそれを持ち続ける傾向があり、しかも自殺未遂を繰り返す実態が明らかとなった。
それでは自殺念慮を保持させる要因とは何であろうか。自殺念慮の原因の組み合わせを見ると、16年調査では「健康問題」、「家庭問題」、「経済生活問題」が19%と最も多く、今回17年調査では「家庭問題」「健康問題」「経済生活問題」の順が19%となっており、順位は変化したがその内容の組み合わせは同様のようである。
念慮を継続させる健康問題に見ると、オッズ比で「心の持病(診断あり)」が2.9と最も高く、次いで「身体の持病(診断あり)」が2.3、「身体の持病(自覚症状あり)」2.2、「不健康の自覚」1.3、「心の持病(自覚症状あり)」1.3という順になっている。
精神疾患は自殺念慮それ自体が症状であるため自殺要因の主要なものと以前より認識されていたが、今回の調査で「身体の持病」が念慮継続要因として極めて高く、確定診断されていない比較的軽症の精神疾患よりも影響度が大きいことが分かった。
念慮継続を抑制する要因としては家族や地域との良好な関係、しかも親密すぎない関係、そして適度な睡眠時間である。今回調査では男性が8時間、女性7時間が最も念慮抑制効果がある適度な睡眠時間であると判明した。
やはり日本では「働き方改革」はもちろん「親密すぎない関係の構築」など「生活のあり方改革」も必要なようだ。(編集担当:久保田雄城)