ローム、省エネ家電に最適な抵抗器 世界シェア獲得に向けて動く
2018年9月30日 12:02
ローム株式会社は9月26日、インバータエアコンの室外機や省エネ白物家電などの電流検出用途に最適な、10~910mΩの高電力長辺厚膜チップ抵抗器「LTR50低抵抗シリーズ(48抵抗値)」を新たにラインアップした。
近年、白物家電業界では、高機能化と多機能化が進んでおり、それに伴ってアプリケーションも大電力化が加速。その一方で、省エネ性能と省スペースへの需要も高まっており、内蔵される電子部品全般においては、この2つの相反する欲求に応えられる商品が求められている。今回、ロームがラインナップした「LTR50」は、抵抗体材料の見直しにより、2550サイズ(縦2.5×横5.0×高さ0.55mm)と小型でありながら、従来の短辺電極タイプと比べて4倍の定格電力2Wを達成しており、このニーズに応える商品であるだけでなく、素子構造の最適化により、長辺厚膜チップ抵抗器として業界トップクラスの抵抗温度係数(TCR)を実現。高精度な電流検出が可能だ。
ロームは近年、次世代の低損失素子として期待されているSiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスなどの半導体分野で注目されることが多いが、元もとの出発点は「抵抗器」だ。
抵抗器はロームの創業製品であり、社名の由来にもなっている。1976年には世界初のチップ型抵抗器を発表するなど、抵抗器では業界をリードし続けているグローバル企業だ。それだけに、今回の新製品のラインナップは業界から大きな注目を集めそうだ。
一般的には、あまり目に触れる機会のない「抵抗器」という部品だが、電化製品や電子部品の高機能化や多機能化において、電流制御や管理のためには、電流検出用のチップ抵抗器は欠かすことのできない重要部品。まさに縁の下の力持ちのような存在だ。
現在、チップ抵抗器の市場は、およそ3割強のシェアを占める台湾の電子部品大手「国巨(ヤゲオ)」がトップに君臨。それに次いで日本の電子部品メーカー、ローム、KOA、パナソニックの3社がほぼ横一線で並んでいる。ヤゲオは今年、米のパルスエレクトロニクスの買収を発表するなど、着実に勢力を拡大しているが、日本企業もまだまだ巻き返しの余地はあるだろう。とくに白物家電の分野では、国内の需要も伸びており、これから先の発展も期待できる。
抵抗器は長年にわたって製造方法に大きな変化が起こっておらず、新製品の開発が段々と難しくなってきているのが現状だ。またそうした状況下でも、顧客メリットの高い新しい製品を生み出し、供給するのは日本企業の得意とするところ。今後の市場動向が楽しみだ。(編集担当:松田渡)