人工衛星を使って地球温暖化が明らかに JAXA
2018年9月28日 21:24
人為的に引き起こされる気候変動は、地上のみならず海中の生態系を変え、個体数に深刻な影響を与える。温室効果ガスが気候に及ぼす影響への理解が、問題解決の一歩となる。英科学誌Nature9月13日号にて「地球観測(Earth Observation)」というタイトルで特集が組まれ、人工衛星を活用した地球観測に取り組む宇宙航空研究開発機構(JAXA)の活動が取り上げられている。
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■地球観測は温室効果ガスの削減に不可欠
1997年に採択された京都議定書に、温室効果ガスの排出量の削減目標が設定されている。温室効果ガスの削減量を検証するために必要なデータを収集するのが、JAXAや国立環境研究所、環境省が共同で運営する温室効果ガス観測技術衛星いぶき(GOSAT)だ。いぶきから取得したデータと、航空機や船舶、地上の観測所などから得られる観測データとを照合することで、温室効果ガスの監視を行えるという。
気候への影響を与える要因のうち、水の循環が特に重要だ。JAXAは全球降水観測計画(GPM)主衛星などを運用し、気象変動が水循環に与える影響を調査する。海氷や海面温度、土壌の湿度だけでなく、雲や植生などを監視しているという。とはいえ、衛星が収集するデータは膨大なため、人間が監視するのは難しい。
JAXAはまた、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)などと協調を取りつつ、地球観測技術を展開できるよう主導する。解析することで政策決定に役立つデータは、1つの機関によって独占されてはいけないと、山川宏JAXA理事長は語る。
■今後の地球観測への取り組み
人工衛星いぶきの後継機としていぶき2号(GOSAT-2)が、10月29日に打ち上げ予定だ。二酸化炭素やメタンガスなど、広い範囲でより正確に測定できるという。いぶき2号により取得されたデータは、2016年に発効したパリ協定にもとづき、温室効果ガスの排出量などをまとめた「温室効果ガスインベントリ」の作成に活用される。
今後JAXAは、2019年度に打ち上げ予定の地球観測衛星「EarthCARE」を情報通信研究機構やESAとともに運用、雲の構造や大気物質(エアゾール)を監視する予定だ。これにより、気象変化予測に必要な予算の概算をより正確に見積もることができるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)