プラスチックゴミが世界を覆い尽くす前に、何ができるのか?(後編)
2018年9月21日 16:38
環境省は使い捨てプラスチック製品が、自然界で分解される製品へと切り替える動きを促進するため、紙製品や生分解性のバイオプラスチックの製造企業に補助金で支援する。紙製のストローや、植物が原料になり微生物の活動で分解するバイオプラスチックのレジ袋や食品容器は、プラスチック製に比べて生産コストが格段に高く普及が進まない。コスト高で製造に慎重な企業への意識付けを補助金が後押しする。
【前回は】プラスチックごみが世界を覆い尽くす前に、何ができるのか?(前編)
日本製紙は紙の臭いが風味を損なったり、強度不足が否めない既存の紙製ストローのウイークポイントを自社技術で克服し、18年中をめどに新しい紙製ストローを実用化する。プラスチックに迫る機能を加工技術で実現する。
王子ホールディングスは、表面に特殊な薬品を塗布して湿気防止機能を強化した包装紙を開発した。家庭用ラップのプラスチックフィルムに匹敵する機能を持つ食品包装紙が、19年に市場に投入される。紙コップに使用される紙製のフタは既に開発済みであるという。
世界の機関投資家も、深刻な海洋汚染が懸念されるプラスチックごみ問題への対策を、企業へ求め始めている。世界4カ国の25の機関投資家で構成される「プラスチック・ソリューションズ・インベスター・アライアンス」(PSIA)という団体は、株主としての立場から、ネスレ、ユニリーバ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ペプシコの欧米4社に対して、プラスチック容器の回収・削減・代替品の開発・リサイクル等を促す活動を始めた。機関投資家が共同して企業に対して“特定の行動”を求めることを「集団的エンゲージメント」というが、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する投資家がプラスチックごみ問題を集団的エンゲージメントのテーマに選択した。
プラスチック製ストロー全廃への動きは、プラスチック製品に依存する現代社会への警鐘としてのシンボルに他ならない。正直言ってプラスチック製ストローを全廃しても、海洋に流れ込む年間推定800万トンという膨大なプラスチックごみの量と比較すれば、砂浜の一粒の砂でしかない。しかし、人々の意識がプラスチック製品全体を抑制する方向に向かえば、社会に大きなうねりを生み出すことも可能だろう。PSIAという環境エンゲージメントを推進する機関投資家が欧米4社に求めていることの意味は大きい。この流れはそう遠くない将来日本の企業へも押し寄せると考えるべきだ。政府や産業界もその方向に目を向け始めたと言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)