国内の出版総市場、電子書籍は9%の高い伸びもトータルでは減少傾向続く
2018年9月19日 23:17
戦後、出版物の売上高は経済の成長に合わせて大きく増大していった。70年代後半から一般書籍が頭打ちになったものの、これに代りマンガや雑誌が大きく市場を拡大し、80年代には雑誌ブームと言われるほど多くの雑誌が刊行され、90年代には市場規模も2.5兆円を超える規模まで達した。
しかし、96年をピークに雑誌の大幅な落ち込みを中心に出版物全体の売上は減少傾向で推移し続けている。近年、電子書籍の登場で持ち直しの兆しが見られるものの市場全体の成長へとは結びついていないようだ。
先月末、矢野経済研究所が出版市場と電子書籍市場の両者を合わせた国内出版総市場の調査結果を公表している。レポートでは、2018年における国内出版総市場の規模は前年比5.0%減の1兆5100億円と見込んでいる。
出版市場と電子書籍市場の伸び率をそれぞれにみると、出版市場は前年比7.3%と大きく減少した一方、電子書籍市場は前年比9.1%の大きな増加となっている。総市場規模1兆5100億円のうち出版市場が1兆2700億円で全体の84%を占め、電子書籍市場は2400億円で16%程度に過ぎない。電子書籍は増加傾向で推移しているが未だウエイトが小さく今後も出版総市場の減少は続くと見込まれる。
17年の国内出版総市場は前年比4.3%減の1兆5901億円と推計されている。コミックを含む雑誌市場は90年代から大きく減少しているが、出版科学研究所によれば、近年コミック販売額の減少幅が特に大きくなっている。17年の国内電子書籍市場は前年比15.8%増の2200億円と推計されており、出版総市場に占める電子書籍のシェアは13.8%となっている。
レポートでは今後、電子書籍については19年には2630億円、20年には2880億円と大幅な成長を見込んでいるものの、出版市場は19年に1兆1960億円、20年に1兆1260億円と大幅に減少し、両者を合わせた国内出版総市場は19年に1兆4590億円、20年には1兆4140億円まで縮小すると見込んでいる。
レポートでは「印刷メディアを用いた既存の出版物から電子書籍へのシフトはコミックを中心に進んでいるものの、少子化や文字離れ等の構造的な減少要因がそれを上回っていると考える」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)