NEDO、水力発電電力量を最大化するダムの運用システムを構築へ 試験開始
2018年9月19日 08:37
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、黒部川水系水力発電所で、これまで考慮されていなかった融雪量を予測することでダムの運用方法を効率化し、発電量を最大化するシステムを構築・検証試験すると発表した。この検証事業では、発電所や発電関連設備の新規設置、増強などは行わず、運用方法の効率化だけで、年間最大約3,000万kWhの発電量の増加(1%増)が期待できるという。
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これまで、水力発電の運用は、熟練技能者の経験にもとづくノウハウで行われる部分も多々あったなかで、団塊の世代の退職による技能伝承の停滞等が課題となっていた。その対策の一つとしてIoT技術の活用による社会インフラの運営効率化が検討されている。NEDOでは、ビッグデータ解析などにより最適運用の形式知を実現し、発電所の運用効率化を図ることをめざして、今回の検証事業を開始した。事業は、降雨・降雪量が多く、水系全体としての総発電量の増加が期待できる黒部川水系をモデル地点とした。
事業は、「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」として、「高度なデータ活用を可能とする社会インフラ運営システムの開発」と「電力事業(水力発電)」を研究開発目標に、6,000万円の予算をかけて、気象工学研究所と関西電力、ニュージェックに委託実施される。
気象工学研究所は、IoT技術を活用したリアルタイムデータ取得システムの構築、観測データの活用による積雪・融雪モデルの構築と高精度気象予測情報を活用したダム流入量予測シミュレーションを担当。ニュージェックは、積雪・融雪モデルの導入による既存ダム流入量予測モデルの高度化と予測流入量を活用した発電運用最適化システムの構築を、関西電力は、フィールド(実機)を活用した試験と発電運用効率化効果の評価、実用性検討をそれぞれ担当する。