野生ゴリラは飼育下より生存能力が高い 中部大学などの研究
2018年9月17日 21:51
中部大学の土田さやか特定講師と牛田一成教授が、ウガンダのマケレレ大学及びガボンの熱帯生態研究所と共同で行った研究によると、飼育下のゴリラよりも野生のゴリラの方が、病原性大腸菌への耐性が高いことが分かったという。
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研究に用いられたのは、飼育下と野生のニシローランドゴリラ、そして野生のマウンテンゴリラである。
そもそもゴリラの仲間は、175万年前にはまだ1種類しかいなかったらしい。その頃にアフリカに大地溝帯ができ東西に分離され、大きくニシゴリラのグループとヒガシゴリラのグループに分化していった。ニシゴリラには、ニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラが含まれる。ニシローランドゴリラは最もポピュラーなゴリラで、動物園で見ることのできるゴリラはほとんどがこの種である。ヒガシゴリラにはヒガシローランドゴリラとマウンテンゴリラがいる。
さて、野生と飼育下で何が違うかというと、腸内細菌である。人間にせよ多くの動物にせよ、腸内には多くの細菌が暮らしている。抗菌物質などをつくる善玉菌と、病原性を持つ悪玉菌がある。
ゴリラというものは動物園では花形のアイドル的な動物の一種である(ちなみに価格も非常に高い)。研究動物としても貴重なものだ。病気になれば、とうぜん薬を使って治療をすることになる。だが、薬を使って治療を行ううちに、いわば本人の「生存能力」を決める善玉菌は量が減り、また抵抗力も減り、同じ条件下で比較すれば、野生ゴリラよりも病気に弱くなってしまうというのが今回の研究だ。
今後の研究としては、飼育下ゴリラに乳酸菌などを与える事で抵抗力が回復するかどうかを検証していきたいという。なお、この研究の詳細は、スイスのオープンアクセス学術雑誌出版社MDPIが発行する微生物学専門誌「マイクロオーガニズムス」に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)