産総研、ロボット介護機器開発ガイドラインを無償提供 安心安全を世界標準へ
2018年9月12日 21:49
産業技術総合研究所(産総研)ロボットイノベーション研究センターは10日、関係機関と分担して、「ロボット介護機器開発ガイドブック」を作成、介護ロボットポータルサイトで無償配布を開始すると発表した。
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開発プロセス、開発環境、及び部品の共通化は、コスト削減や高品質化に欠かせず、機器の普及に役立つ。欧米でのビジネスモデルとして認知されてきたが、世界の先端を走る日本のロボット業界がガイドラインを制定し、無償公開する意義は大きい。逆に、先進国の中で最も高齢化が進んでいる日本にとって、介護機器開発のガイドライン制定と、そのガイドラインに基づく安心安全な介護機器の普及は、待ったなしであろう。
ロボット介護機器開発の関係機関は、日本品質保証機構、アプライド・ビジョン・システムズ、愛知医科大、日本自動車研究所、労働者健康安全機構、名大、日本福祉用具評価センター、日本ロボット工業会、日本福祉用具・生活支援用具協会の面々だ。
ガイドラインは、ロボット介護機器の安全設計・試験法、効果評価法をまとめたものだ。
●日本の要介護人口と課題
厚労省によれば、2000年での65歳以上被保険者2,165万人の内、218万人が要介護の認定を受けていた。そして2017年4月末での65歳以上の被保険者は3,446万人と1.6倍に増え、要介護の認定者数は633万人と2.9倍にも増えた。今回の発表では、2018年5月末に646万人が要介護の認定を受けると推測、今後も増加の一途をたどる。
厚労省は現状のトレンドと生産年齢人口の減少を勘案し、2020年の介護人材人口は206万人、20から25万人が不足すると推定。2025年の介護人材人口は215万人。253万人の需要に対し38万人不足すると推計。2017年度の介護保険給付費の総額は9兆4,328億円。2016年度の医療費約41兆円の1/4程度の規模に膨らんできている。
また、介護人材の高齢化も課題だ。介護職員の13.6%、訪問介護員の36.4%が60歳以上だ。介護員の高い意識や意欲が就労を継続するも、体力の衰えが意欲を削ぐ。
●ロボット介護機器開発ガイドラインの特長
ロボット介護機器、重点5分野における8種類のロボット介護機器を想定したガイドラインは、450頁に及ぶ。ロボット介護機器とは、高齢者の自立支援や介護者の負担軽減を目的とする。ロボット介護機器の重点開発分野は、経産省と厚労省の需要調査に基づく。移乗介助(装着型、非装着型)、移動支援(屋外、屋内)、排泄支援、見守り(施設型、在宅型)、入浴支援の8種類のロボットを想定する。
生活支援ロボットの国際安全規格ISO 13482発行の貢献から培ったガイドラインだ。開発プロセスでは、自動車業界や半導体業界が採用しているV字モデルであり、安心安全設計の基本は業界共通のようだ。このV字モデルに、効果安全目標を達成するための開発コンセプトシートとその検証手段を追加し、想定する支援や活動を明確にした。(記事:小池豊・記事一覧を見る)